日本経団連タイムス No.2979 (2010年1月1日)

御手洗会長新年メッセージ「新たな発展へ確かな布石を」


新たな成長戦略の策定と税・財政・社会保障の一体改革の推進

わが国経済は、最悪期を脱しつつあるものの、世界同時不況が与えた痛手は大きく、円高、デフレの進行、厳しい雇用情勢など、未だ予断を許さない状況にある。財政・金融両面からの切れ目ない景気刺激策が求められるとともに、企業自らの責任と努力により新たな需要と雇用を創出し、一刻も早く景気を自律的な回復軌道に乗せることが肝要である。また、本格的な人口減少と高齢化の急速な進展の中で、国民の閉塞感や将来不安はいまだ払拭されていない。新たな発展に結びつく成長戦略の確立や税・財政・社会保障の一体改革、さらには少子化対策により、国民が実感できる持続的な経済成長と安心・安全な社会の実現を図ることが、国はもとより経済界にも課せられた重要な責務であると認識している。

日本の強みを生かした新たな成長の実現

わが国は、幾度となく経済・社会環境の激変に見舞われながらも、豊かで質の高い国民生活を実現してきた。内外に山積する諸課題を解決する鍵は経済成長であり、今こそ、日本の強みを活かし、新たな成長を実現する視点が重要となっている。そのための有望分野は、決して少なくない。世界最先端の環境技術に一層磨きをかけることで、経済と環境の両立が可能となる。行政、医療、教育、交通など、あらゆる社会的インフラにICTを利活用することにより、効率的で利便性が高く、安心・安全な社会が構築できる。道州制を導入し地方分権改革を導入していけば、地域が活性化され、新たな雇用を生み出すイノベーションや新産業の創出も促進される。さらに、産業構造の大変革を見据えつつ、産官学の連携により国家的プロジェクトを実施していくことで、日本の明るい将来像が描けよう。

潜在成長力の高いアジアから環太平洋への連携強化

グローバル化が加速する中、構造改革と経済成長の実現にあたっては、世界の潮流を見据えたスピード感とダイナミズムが求められる。通商政策や地球環境問題をめぐる国際交渉に主体的な役割を果たすとともに、日米関係を外交の基軸としつつ、経済連携協定等による経済統合の動きをアジアから環太平洋へと広げて行きたい。メコン地域開発などアジアのインフラ整備にも積極的に協力し、アジアの中でわが国も共に成長して行く視点が欠かせない。

新たな発展に向けて

わが国の将来を左右することにもなるこの一年、日本経団連は、諸課題に真正面から向き合い、経済の活性化、新たな雇用の創出に全力を傾けるとともに、新たな発展に向けて確かな布石となる基盤整備に邁進する所存である。関係各位のご協力をお願いしたい。

Copyright © Nippon Keidanren