日本経団連タイムス No.2980 (2010年1月14日)

海洋開発めぐる国際法上の課題聞く

−海洋開発推進委員会総合部会


日本経団連は12月11日、東京・大手町の経団連会館で海洋開発推進委員会総合部会(山脇康部会長)を開催した。当日は、東京大学大学院法学政治学研究科の中谷和弘教授から、海洋開発をめぐる国際法上の課題について説明を聞き、意見交換を行った。中谷教授の説明概要は次のとおり。

■ 海域の分類

海域は、領海、排他的経済水域、大陸棚、深海底に分類される。領海は12カイリで、国家領域の一部である。排他的経済水域は200カイリであり、沿岸国には主権に準ずる主権的権利が与えられ、例えば外国企業の天然資源開発を排除できる。大陸棚は領海外の海面下の区域の海底であり、沿岸国の主権的権利が及ぶ。通常は200カイリまでであるが、日本は昨年11月に国連に大陸棚延長を申請し、最大150カイリの延長が認められる可能性がある。深海底は200カイリ以遠の海底であり、国際海底機構を通じて富の一部が途上国に配分される。

■ 大陸棚における鉱物資源開発

わが国では、鉱物資源開発に鉱業法が適用される。英国企業の日本子会社が、鉱業法に基づき、2007年2月に133件(沖縄トラフ、伊豆小笠原弧)、08年5月に405件(伊豆小笠原弧)の海底熱水鉱床の探鉱権を申請し、審査中である。海は無主物であるという鉱業法や先願主義の妥当性が検討されてもよい。外資規制も考えられるが、政府の方針は海外からの投資を増やすことであり、難しい問題である。
国連海洋法条約では、通常の場合は他国の科学的調査に沿岸国は同意を与え、資源探査には裁量により同意を与えないことができるとされている。問題は科学的調査を偽装した資源探査であり、日本の近海で通告せずに資源探査をする中国船が出ている。海洋科学調査や資源探査を許可制にして、外国企業には資源探査をさせないことが立法論としてあり得る。
大陸棚の境界画定の二国間合意の大半は等距離中間線であるが、国際司法裁判所は衡平原則を採用しており、確立された基準がない。個人的には、カイリの上限や裁量の余地を裁判所で示せばよいと思う。
東シナ海資源開発問題では、日本は中間線、中国は中間線の東側を主張している。08年6月に部分的な3合意がされたが、先般、中国が掘削施設を完成させたことはおそらく合意に反するであろう。

■ おわりに

「国富」としての海洋資源の認識が重要であり、積極的に研究開発投資をすべきである。外国企業には資源を取得させない形式の開発契約や、国富を保持できるルールをつくる必要がある。

〈意見交換〉

意見交換では、出席者から「鉱業法は陸上を前提にしているため、海洋開発に関する法律をつくるべきではないか」との質問が出された。これに対し中谷教授は、「海特有の問題があるため、鉱業法を準用するのではなく新しい法律をつくる必要がある。または鉱業法を維持しながら許可を与えるときの条件を課すなど、国の関与を強める必要がある」と答えた。

【産業技術本部】
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