日本経団連タイムス No.2983 (2010年2月4日)

「管理・監督者のためのメンタルヘルス対策実践セミナー」開催

−うつ病など精神不調者への対応を解説


日本経団連事業サービス人事賃金センターは1月22日、都内で「管理・監督者のためのメンタルヘルス対策実践セミナー」を開催した。

精神不調者は、どの職場にも常に1〜2%存在すると言われているが、特に近年、多くの職場でうつ病が増加している。一方、裁判では自殺の業務起因性や企業の安全配慮義務違反が広く認められ、企業にとって、こうした精神不調者への対応はリスク管理上の重要課題になっている。

特に精神不調者と対応する職場の管理者の役割は非常に重要で、メンタルヘルスに関する正しい知識を持ち、部下に適切に対応することが求められる。

そこで同セミナーでは、長年企業の現場で社員の相談に応じ、管理者への指導・教育を行っている三菱重工業・健康管理センター主席衛生部員の北村尚人氏(臨床心理士)を招き、うつ病等の早期発見や対応方法について、ケーススタディーやシミュレーションを交えた解説を聞いた。

講演のなかで北村氏は、うつ病とは神経の刺激伝達の障害により、気がめいって活動性が低下する「病気」であり、うつ病者に対し、管理者や同僚が叱咤激励したり、気分転換に飲酒、ゴルフなどに誘い出しても、症状は軽くなるどころか、むしろ精神的負荷を増加させ、症状を悪化させることが多いと指摘。特に飲酒は、アルコールが神経の刺激伝達を抑制するため、生理的にうつ病を悪化させるおそれがあり、飲酒は控えるべきであるという。

そのうえで、職場の管理者としては、部下がうつ病にならないよう、業務負荷の適正化、長時間労働の制限、人間関係のトラブルの解決などを心がけることにより、業務に起因するうつ病をできる限り予防するよう努めることが重要であると説明した。

また、うつ病の早期発見・早期対応には、部下が元気をなくし悲観的なことを言うようになる、口数が少なくなるなど、言動の変化を早めに察知し、うつ症状があるかどうか対話による問いかけで確認し、うつ病が疑われる場合は、自殺念慮(自殺するしかないといった思い込み)の有無も確認する必要があると指摘。もし自殺念慮が疑われる場合は、家族同伴ですぐにも精神科を受診させる必要があると強調した。

そのほか北村氏は、若者に多くみられる新しいタイプの「うつ」や、統合失調症のケースへの対処方法等も紹介し、管理・監督者に必要な知識と対応方法を、具体的・実践的にわかりやすく解説した。

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