日本経団連タイムス No.2984 (2010年2月11日)

新しいハイブリッド年金制度(BR制度)で説明聞く

−社会保障委員会年金改革部会


日本経団連の社会保障委員会年金改革部会(山崎雅男部会長)は1月26日、東京・大手町の経団連会館で会合を開催し、三菱UFJ信託銀行年金コンサルティング部の佐野邦明専門顧問より、日本年金数理人会が提案する新しいハイブリッド年金制度( Benchmark Related 制度、以下BR制度)について、三菱UFJ信託銀行の実務的な検討結果とあわせて説明を聞くとともに、意見交換を行った。佐野専門顧問の説明の要旨は次のとおり。

■ BR制度提案の背景

第一に、退職給付会計において即時認識導入の議論が進んでおり、市場環境が企業の自己資本に直接影響を及ぼすようになる見込みで、そのリスクシェアが企業年金見直しのテーマとなっている。第二に、適格退職年金制度の廃止に伴い、中小企業を中心に企業年金への円滑な移行が進まず、企業年金制度を廃止するケースが多く見られ、企業年金の維持・普及が危ぶまれている。そこで、日本年金数理人会は現行確定給付企業年金(DB)法の改正を伴わない範囲で実施可能な制度を検討し、2009年4月に公表した。

■ BR制度の概要

BR制度はキャッシュバランス(CB)制度と同様に、勤務クレジットと収益クレジットの累積で給付額が決まる。CBとの違いは新発債の利息ではなく、あらかじめ労使協議で定めた運用の資産構成割合に基づく騰落率(複合インデックス)で収益クレジットを算出することにある。年金額も複合インデックスに応じて改定される。BR制度は最低保証として勤務クレジットがあるものの、DBの枠内で受給者や加入者も運用に伴うリスクを負担することになる。他方、年金資産の運用に連動して年金財政上の数理債務や退職給付会計上の退職給付債務(PBO)が動くため、追加的な掛金の引き上げや会計上の追加負担が発生する可能性が小さくなる。CBと確定拠出年金(DC)の間のような特色を持った制度である。

■ BR制度の課題

BR制度の提案に対して、DB法政省令の解釈論だけで対応するのは難しく、政省令を修正する必要があるとの意見もある。具体的には、収益クレジットが運用悪化に伴って一時的にでもマイナスとなった場合、再評価率がゼロを下回らないとのDB法施行規則第29条に抵触するのではないかとの問題である。これについて、日本年金数理人会は毎年ではなく退職時の元本保証で問題ないと判断している。
また、運用リスクを企業と従業員でどのようにシェアするのかも課題である。退職時期が1年違うと運用次第で給付額が大きく異なることもあり得るため、急激な変動に対する緩和措置を検討することも考えられる。

<意見交換>

引き続き行われた意見交換では、(1)BR制度でも最低保証を行うのか(2)今回はDBからのアプローチだが、DCからのアプローチも検討したのか(3)CBとDCの間で選択肢が広がるのは魅力的だが、厚労省での検討は進んでいるのか――などの質問が出された。これに対し、(1)最低保証にもいろいろある。毎年の運用実績について常にゼロ以上を保証するとコストがかかるが、日本年金数理人会では一番コストのかからない保証(退職時に元本を下回らない)を提案している。一時的なマイナスは許容し、退職時に元本保証するのが現実的ではないか(2)DB法とDC法に分かれている現行の枠組みは変えられないため、米国のターゲットベネフィットプランに相当する仕組みとして、事業主が運用する商品をDCのラインアップに加え、その商品を従業員が選択し、運用が目標を下回ると掛金を引き上げ、上回ると引き下げるという制度も提案している(3)CBのオプションとしてBR制度が必要であるとの声を企業から上げることが実現の原動力になる――との回答があった。

【経済政策本部】
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