日本経団連タイムス No.2985 (2010年2月18日)

これからの働き方や雇用のあり方をめぐり議論展開

−第68回シンポジウムを開催/21世紀政策研究所


日本経団連の21世紀政策研究所(御手洗冨士夫会長、宮原賢次理事長)は9日、東京・大手町の経団連会館で第68回シンポジウム「これからの働き方や雇用を考える」を開催した。同研究所では昨年から、最近の雇用情勢を踏まえつつ、中長期的視点で今後の望ましい働き方や雇用のあり方を模索しており、同シンポジウムを契機としてさらに検討を深めるとしている。

宮原理事長が開会あいさつで、「雇用問題は、日本産業の競争力、日本社会の活力の向上にとって避けて通れない重要なテーマ。今後は働き方の多様化をいかに進めるかが主要な課題と認識している」とし、今後の活発な議論への期待を表明した。

続いてリクルートワークス研究所所長の大久保幸夫氏が「働き方・雇用の現状と今後の課題」と題した講演で、「従来主流と思われていた男性正社員は現在、就業者全体の35%程度であり、雇用形態の多様化(非正規雇用、間接雇用などの増加)、働き手の多様化(既婚女性、高齢者などの増加)は進んだが、働き方の多様化(短時間勤務、テレワークなど)は進んでいない」と現状を分析。「就業機会の向上、ワーク・ライフ・バランスの改善、生産性向上などのために今後働き方の多様化が必要である。そのためには、多様化の目的を明確にした取り組み、労働者の福祉・保護と企業経営力の強化とのバランスを考慮した取り組み、多様な働き方を念頭に置いた法制度の整備などが今後の課題」と指摘した。

その後、日本経済新聞社論説委員の西條都夫氏をモデレーターとして、大久保所長に加え、神戸大学教授の大内伸哉氏、日本生産技能労務協会理事の青木秀登氏、21世紀政策研究所主任研究員の細川浩昭氏によるパネルディスカッションが行われた。

議論では、まず雇用形態の多様化の進行に伴う非正規雇用の増加について、「雇用形態の多様化は、基本的に企業と働く人双方のニーズに基づき進行してきたもので、雇用の拡大や生産性向上など社会的メリットもある。今回の不況では非正規雇用の不安定さなどの負の側面がクローズアップされているが、働く人のニーズの存在や迅速な雇用の需給調整を果たすなどのメリットも正しく評価し、事実に基づいた冷静な議論が必要」との認識が各氏から示された。

また、「今後の多様な働き方の選択肢として、勤務地や職種などの限定付き正社員、短時間勤務正社員、キャリアアップを目指さない働き方などがある。これらは現行法制でも推進可能であり、ニーズに応じたさらなる広がりが期待される」「雇用問題を格差や貧困の問題の原因とする論調があるが、格差や貧困の問題は、いかに経済成長を実現するかの問題でもある。これらを混同した議論によって短絡的に政策が決定されないか懸念される」「規制論に偏らないためにも適正な企業行動が求められる」など、多岐にわたる議論が展開された。

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