日本経団連タイムス No.2986 (2010年2月25日)

九州経済懇談会を福岡で開催

−産業競争力強化や人口減少社会への対応など意見交換


「わが国の新たな発展へ、地域の確かな布石づくりを」
をテーマに開いた九州経済懇談会

日本経団連(御手洗冨士夫会長)と九州経済連合会(九経連、松尾新吾会長)は17日、福岡市内のホテルで第62回九州経済懇談会を開催した。懇談会には、日本経団連から御手洗会長、副会長、評議員会副議長らが、九経連からは松尾会長をはじめ会員約250名が参加、「わが国の新たな発展へ、地域の確かな布石づくりを」をテーマに意見を交換した。

開会あいさつした九経連の松尾会長は、九州経済界として今後、(1)社会インフラの整備(2)道州制の実現(3)低炭素化をはじめとした環境問題への対応(4)新規事業の成長(5)東アジアとの交流拡大――に取り組んでいくとの方針を示し、そのなかでもとりわけ、道州制の実現と低炭素社会への転換の2つのモデルを九州が示していくことが重要であるとの見方を示した。

続いてあいさつした日本経団連の御手洗会長は、日本経済は最悪期を脱しつつあるものの、いまだ予断を許さない状況が続いているとの認識を示したうえで、今こそ日本の強みを活かし、新たな成長を実現する視点が必要と指摘。こうした認識のもと、先月公表した「2010年の重要政策課題」で掲げた項目に積極的に取り組んでいくとの意向を示した。

■ 活動報告

第1部の活動報告では、日本経団連側から、森田富治郎副会長が「経済危機脱却後を見据えた新たな成長戦略」、大橋洋治副会長が「経営労働政策委員会報告」、西田厚聰副会長が「地球温暖化問題をめぐる動向」、池田弘一評議員会副議長が「道州制の導入に向けた取り組み」について報告した。

一方、九経連側からはまず、大野芳雄副会長が、新政権下における道州制の推進について報告。道州制を「地域主権国家」の究極の姿と位置付け、新政権に対して、地域主権改革の着実な推進と地域主権改革を通じた道州制への道筋・工程表を明らかにするよう求めていくと述べたうえで、日本経団連と総務省が設置した「道州制タスクフォース」を通じて地方の声を国の政策に反映していくことへの期待を示した。

次に明賀孝仁副会長が、低炭素社会実現に向けた九州地域戦略会議の取り組みを報告。これまでアンケートやヒアリング調査をもとに現状把握・分析を重点に検討を実施し、来年度には、環境関連産業の振興策の検討や官民一体で具体的に実施可能な施策を「低炭素社会実現のためのアクションプラン」として策定する予定であると説明した。

続いて田中浩二副会長が、九州の一体的な観光の取り組みについて報告。海外からの誘客拡大のため九経連として、外国人旅行者に対するワンストップサービスの強化や入国管理手続きの迅速化、学校交流を通じた国際観光の振興等を関係機関へ要望したことを紹介した。

■ 意見交換

第2部の意見交換では、九経連側から、(1)九州のものづくり力と産業競争力強化(2)九州における産学官連携(3)九州における高度ICT人材の育成(4)海外高度人材の活用など、アジアとの交流(5)少子化問題、ワーク・ライフ・バランスなど、人口減少社会への対応(6)九州における社会資本整備の必要性――の6点について質問があった。

これに対して日本経団連側は、(1)資源・環境制約のなか、産業競争力を強化するためにはハイテク産業の振興が不可欠。ものづくりの基盤である技術力の向上のため、研究開発促進税制の拡充や政府の研究開発投資の一層の充実を図ることが必要(西田副会長)、(2)イノベーション創出の観点から、克服すべき重要課題を産学官で共有し、その成果を実際に社会に還元・活用する「課題解決型アプローチ」の考え方が重要(佃和夫副会長)、(3)国際競争力を高めていくためには、産学官の連携のもと、10年、20年先を展望しつつ、高度ICT人材の育成に取り組むことが不可欠(渡辺捷昭副会長)、(4)アジアとの人的交流の拡大は、わが国がアジアの成長に貢献し、アジアとともに成長するうえで極めて重要。競争力ある人材を育成、確保する観点から留学生の戦略的受け入れが必要(槍田松瑩副会長)、(5)少子化対策にあたっては政策目標の設定と進捗状況の評価を実施し、効果的な施策に重点的に財政投入する観点が重要。まず保育制度の抜本改正による待機児童の解消、子育て世代に対する経済的支援の拡充を図るべき(前田晃伸副会長)、(6)アジアの成長力を取り込んでいくためには、港湾・空港などのゲートウェーの整備に加え、物流ネットワークの整備が急務。生産拠点と港湾・空港を連結する高速道路がネットワークとして整備されてこそ、わが国のものづくり力とサプライチェーンの真価が発揮される(佃副会長)――と発言した。

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地元企業を視察

懇談に先立ち日本経団連役員らは、熱技術で快適な生活環境づくりに役立つ製品を製造するメーカー、昭和鉄工(本社=福岡市)を視察し、山本駿一社長らと意見交換した。

【総務本部】
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