日本経団連タイムス No.2988 (2010年3月11日)

宇宙法制をめぐる課題で説明聞く

−宇宙基本法以後の日本の宇宙法など
/宇宙開発利用推進委員会企画部会・宇宙利用部会合同会合


日本経団連は2月24日、東京・大手町の経団連会館で、宇宙開発利用推進委員会企画部会(栗原昇部会長)と宇宙利用部会(西村知典部会長)の合同会合を開催した。当日は、慶應義塾大学総合政策学部の青木節子教授から宇宙法制をめぐる課題について説明を聞くとともに意見交換を行った。説明の概要は次のとおり。

■ 国際宇宙法の概要

国連宇宙5条約とは、1967年の宇宙条約に始まり、救助返還協定、損害責任条約、宇宙物体登録条約、月協定である。日本は月協定以外の4条約に加盟している。宇宙に関する条約は少なく、79年以降の新しい条約はない。宇宙活動を行う国が少なく、専門家の意見が強いため、国連では条約ではなく、勧告的な意味のみを持つ原則や宣言などが採択されている。

国際宇宙法の原則として、宇宙空間の探査・利用は全人類に認められる活動分野である。これは宇宙活動の自由と合致しないことがあるため、国連の宣言で解釈の指標を定めた。

宇宙条約のユニークな規定として、国家への責任集中という原則があり、宇宙活動では、国家は自国の活動のみならず、私企業等の活動についても責任を負う。このほか、宇宙物体に起因する損害賠償については、打ち上げ国が責任を負う。

■ 宇宙基本法以後の日本の宇宙法

2008年8月に施行された宇宙基本法では、基本理念、基本的施策、宇宙基本計画、宇宙開発戦略本部、宇宙活動法について定められている。09年6月に公表された宇宙基本計画は今後10年を見据えた5年間の計画であり、5つの利用システムと4つの研究開発プログラムが盛り込まれ、日本経団連の提言も取り入れられている。

2010年1月に、宇宙開発戦略本部の宇宙活動に関する法制検討ワーキング・グループは「中間取りまとめ」をまとめた。そのなかでは、宇宙活動法の目的として、宇宙4条約の国内履行、被害者の保護の確保、民間事業者の参入促進のための許可要件、第三者損害賠償の仕組みなどが盛り込まれている。今後は産業振興に関して、法制化が必要な事項については順次法案を作成し、法制化になじまないものは適切な措置を講じる。

宇宙活動法により、予見可能性が確保される。わが国では、国の補償の確保、被害者救済、産業支援のバランスをとり、アジア諸国のモデルとなる宇宙活動法をつくろうとしている。

【産業技術本部】
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