日本経団連タイムス No.2989 (2010年3月18日)

1%クラブが設立20周年記念シンポジウム開催

−「企業とNPOとのよりよい協働に向けて」をテーマに


佐藤会長

日本経団連1%クラブ(佐藤正敏会長)は3日、日本NPOセンター、国際協力NGOセンター(JANIC)、日本経団連自然保護協議会の協力を得て、「企業とNPOとのよりよい協働に向けて」をテーマに、設立20周年記念シンポジウムを開催した。

冒頭、佐藤会長はあいさつのなかで1%クラブが推し進めてきた「社会貢献活動を行う企業や個人を会として支援」「国民各層において寄付やボランティア活動が活性化する気運の醸成」「NPOと企業・個人を結び付けるコーディネーターとして、社会のニーズに合った社会貢献活動を推進」の3点から20年の活動を振り返り、社会的課題の解決に向け企業とNPO・NGO関係者が意見交換を行い意識の共有を図ることは重要とシンポジウムへの期待を語った。

■ 基調講演

米倉教授

続いて一橋大学イノベーション研究センター長の米倉誠一郎教授が「ソーシャルビジネスとイノベーション」と題して基調講演を行った。米倉教授はGDP比200%の借金を抱えて原資が不足している日本の現状を踏まえ、収益性がないと思われていた分野でも利益を上げることの重要性を指摘した。また、「成長と発展は違う」というグラミン銀行のユヌス総裁の発言を引用し、発展とは「下位25%が豊かになるようにインセンティブを与えること」との見解を示した。その方策がソーシャルビジネスだとして、杤迫篤昌氏の国際送金「マイクロファイナンスインターナショナル」、駒崎弘樹氏の病児保育「フローレンス」、ジョン・ウッド氏の教育支援事業「Room to Read」を挙げ、利益性がないと思われていた分野にNPO・NGOが参入して、利益性をどう生み出していくかが21世紀のイノベーションのカギであると説いた。

企業の社会貢献とNPOとの協働のあり方で意見を交換

■ パネルディスカッション


嶋田座長

鈴木執行役員

山岡代表理事

続いて行われたパネルディスカッションでは、嶋田実名子日本経団連社会貢献担当者懇談会座長をコーディネーターに、企業の社会貢献とNPOとの協働のあり方について地域の企業、NPO、学識者のそれぞれの立場から意見が交わされた。十勝毎日新聞社の鈴木裕之執行役員はグループとしての地域振興への取り組みの事例を示し、地域が疲弊すると地元企業が成り立たないので地域発展を会社の発展と同視し、そのために地域貢献を行うという社の考え方を紹介。日本NPOセンターの山岡義典代表理事は「新しい公共」概念が周知されるようになるまでの10年の歩みに触れながら、企業は従来の納税による公共への関与に加え、独自の社会貢献活動やNPOとの協働を通じて新しい公共への関与に注力すべきとの考えを示した。

これらの発言を受けての意見交換では、成果ある協働にあたっては、異質に思える相手の論理を相互理解するとともに、お互いに主張しあい、ときに断れるだけの「緊張ある協働」関係が必要であるという認識で一致した。また、1%の枠組みのなかで各社の資金をまとめて、重要な社会的課題に対し効果的に集中投下する仕組みができないかなどの提案も出された。議論を受けて嶋田座長からは、政治的な変化、若い人の社会貢献への関心、企業のグローバル展開など社会貢献をめぐる環境が変化するなかで、変化に流されずに各人が当事者意識を持つことが大事との所感が示された。

シンポジウム後半の分科会では、「地域の課題解決に向けたしかけづくり」「生物多様性におけるNPOと企業の関係」「貧困削減に向けた企業の取り組みとNGO」の各テーマについて、より踏み込んだ議論が行われた。

【政治社会本部】
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