日本経団連タイムス No.2990 (2010年3月25日)

提言「わが国の持続的成長につながる大胆な都市戦略を望む」を公表

−都市の持続的成長戦略を提言/政府の新成長戦略に対応


日本経団連は16日、政府の新成長戦略に対応して、提言「わが国の持続的成長につながる大胆な都市戦略を望む」を公表した。
提言の概要は次のとおり。

■ 今後の都市整備にあたっての基本的考え方

上海、シンガポールといった世界の大都市は、先端産業の集積、高度人材の獲得、観光客の誘致に国を挙げて取り組んでいる。わが国の大都市もグローバルな競争力を高め、国全体の成長エンジンの役割を担わなければならない。同時に、わが国の持続的な発展には、地方都市が自立して地域資源に磨きをかけ、活性化を図ることが重要である。

また、国を挙げて環境問題への対応を迫られるなか、都市のエネルギー供給のあり方、都市交通の形態、住宅・建築物の環境性能などについても抜本的な対策が求められる。

さらに、財政制約のもとで、老朽化した都市インフラの維持管理、安全・安心の確保や高齢化対応のため、これまで以上に効率的に都市機能を高度化していかなければならない。

■ 都市の競争力強化につながる政策課題

このような都市の姿を実現するため、政府は次のような施策を講じる必要がある。

第1に、国際競争力の強化や社会的課題への対応に不可欠なものに重点を置き、利便性の高い交通・物流インフラ、高水準の業務・生活基盤、環境と人に優しい都市構造、内外の人々を引き付ける観光インフラを早急に整備する必要がある。

第2に、財政負担を極力抑えながら、都市機能を高度化していくためには、民間にある知恵やノウハウ、資金を最大限活用する必要がある。その手段として、PFI( Private Finance Initiative )やPPP( Public Private Partnership )の積極的な活用に向けた制度改善が求められる。また、証券化の手法等を通じて、民間や地域住民による投資を促す取り組みも重要である。

第3に、民間の活力を活かした都市再生を進めるには、都市開発関連の法制度の見直しも必要である。特に、2012年に見直し期限を迎える都市再生特別措置法の枠組みは、都市開発の円滑な遂行に極めて効果があり、これまで多くの民間投資、経済波及効果を生んできた。都市再生特別措置法については、事業者の意見も踏まえ、改善のうえ延長・恒久化を行うべきである。さらに、老朽化したマンションなどの建物の建て替えや、都心部の低未利用地などの高度利用も求められることから、良質な建物に対する容積率の緩和、移転の柔軟化など、インセンティブとなる規制緩和も必要である。

第4に、こうした政策課題について、限られた予算で確実な成果を生み出すには、全国一律での対応は難しい。規制緩和、予算、税制など、施策を先行的に集中投入する「成長戦略特区」のようなモデルプロジェクトが必要となる。こうしたモデルにおいて効果を十分検証したうえで、効果が示されたものについては、広く各地、さらには海外市場に展開すべきである。

【産業政策本部】
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