日本経団連タイムス No.2991 (2010年4月1日)

東海地方経済懇談会を名古屋で開催

−生物多様性、道州制、地域活性化、インフラ整備などで意見を交換


日本経団連(御手洗冨士夫会長)、中部経済連合会(中経連、川口文夫会長)、東海商工会議所連合会(東海連、岡田邦彦会長)は3月11日、名古屋市内のホテルで東海地方経済懇談会を開催した。懇談会には日本経団連から御手洗会長はじめ副会長、評議員会副議長らが、中経連、東海連からは川口会長、岡田会長ら会員約180名が参加、「わが国の新たな発展に向け、地域の確かな布石づくりを」をテーマに意見を交換した。

あいさつする御手洗会長

開会あいさつした東海連の岡田会長は、現下の厳しい経済状況において当地域が発展していくための課題として、(1)モノづくりにおける「マーケティング力」と「デザイン力」の向上(2)今年名古屋で開催される生物多様性条約第10回締約国会議(COP10)の成功(3)多様な観光資源を活用した観光振興(4)航空宇宙産業の成長促進(5)産業振興を支える陸・海・空のインフラ整備――を挙げた。

続いてあいさつした御手洗会長は、日本経済はいまだ予断を許さない状況が続いており、企業としても新たな需要と雇用の創出に努めることで、自律的な景気回復軌道に乗せていくことが重要と指摘したうえで、今こそ日本の強みを活かし、新たな成長を実現する視点が不可欠と強調。こうした認識のもと、1月に公表した「2010年の重要政策課題」で掲げた項目に積極的に取り組んでいくとの意向を示した。

■ 活動報告

第1部の活動報告では、日本経団連側から、氏家純一副会長が「税・財政・社会保障の一体改革の推進」、大橋洋治副会長が「経営労働政策委員会報告」、前田晃伸副会長が「『国民の声』への規制改革要望」、清水正孝副会長が「地球温暖化問題への取り組み」、渡辺捷昭副会長が「新しい社会と成長を支えるICT戦略のあり方」について説明した。

一方、中経連、東海連側からは、まず神尾隆中経連副会長が、日本経済と中部経済における再生の目標像とシナリオについて発言し、2月に策定した「経済再生の目標像とシナリオ」の内容を説明した。中部経済において、自動車産業に続く第2、第3の柱となる産業を育成していく必要があり、そのためには産業構造転換への意思や方向性を地域全体で共有することから始め、最終形として仮想的な中部州政府の設立を目指していると述べた。

続いて「COP10の開催と企業における環境対策の推進」について発言した名古屋商工会議所副会頭の安井義博氏は、COP10の成功のため、経済界も加わっているCOP10支援実行委員会を中心として準備活動を行うとともに、市民レベルでの機運の醸成に努めていると述べた。また、地球温暖化対策については、2020年において、90年比マイナス25%を実現するためには、再生可能エネルギーなどの分野を中心に大幅なイノベーション・技術革新が不可欠であると指摘した。

■ 意見交換

第2部の意見交換では、中経連、東海連側から、(1)COP10の支援事業の一環として、「中部経済連合会生物多様性宣言」の策定を計画している(2)道州制の実現には、国民的な世論の盛り上がりが不可欠であり、さまざまな場所、機会をとらえて、啓発活動を重層的に展開することが重要(3)持続的な地域の発展には、他地域との差別化をどう図り、魅力をどう育み発信していくかが重要(4)政権交代により、社会資本整備に対する基本的な考え方に変化が見られるが、中経連では、地方分権社会の到来も視野に入れ、真に必要不可欠な国際競争基盤の整備・強化に向けて、積極的な活動を行っている(5)リニア中央新幹線は、将来の日本の国土形成や産業に多大な影響を及ぼすことから、国家的プロジェクトとして推進する必要がある(6)自然災害や新型インフルエンザの流行等企業経営へのリスクを最小限にとどめるため、企業独自の事業継続計画の策定・実施の検討が必要。また、人口減少は将来のわが国の力を損なう大きな課題であり、その解決には共働き世帯の子育てを補完する保育環境の整備が不可欠である――の意見があった。

これに対し日本経団連側が、(1)生物多様性は、政府による規制ではなく、企業による主体的な取り組みの強化によって保全すべき(清水副会長)(2)経済三団体で共催する「地域主権と道州制を推進する国民会議」を全国展開し、国民からの支持を得る努力を行う(岩沙弘道副会長)(3)「三遠南信」の広域連携の取り組みは、地域が自らの創意工夫により地域経営を行うとの道州制の理念に沿った事例である(岩沙副会長)(4)安心・安全のための投資や効率的な物流インフラ整備など次の成長につながる社会資本の整備を、日本経済の発展のために積極的に推進することが必要(宗岡正二副会長)(5)社会インフラ分野を今後の成長産業にするため、政府・経済界の協力体制を整えていく必要がある(柴田昌治評議員会副議長)(6)首都圏直下地震を念頭に、自助・共助・公助の3つの視点からの事業継続計画の策定や新型インフルエンザ対策のセミナーを開催、企業の事例を紹介し事業継続計画の重要性について理解を求めている。また、子育て支援に関し、1月末に政府が公表した「子ども・子育てビジョン」において、待機児童解消に向けた保育サービスの拡充策について目標設定がなされており、今後整備が進むことが期待される(森田富治郎副会長)――と発言した。

【総務本部】
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