日本経団連タイムス No.2996 (2010年5月13日)

G8ビジネス・サミットをオタワで開催

−世界経済の諸課題で意見交換


G8各国の経済団体首脳は4月28、29の両日、カナダのオタワに集い、世界経済をめぐる諸課題について意見を交換した。日本経団連からは、御手洗冨士夫会長、米倉弘昌評議員会議長、渡文明副会長が参加した。パネル討議には、豪州、ブラジル、中国、インド、韓国の経済団体代表も加わった。パネル討議ならびに来賓のハーパー・カナダ首相のあいさつの概要は次のとおり。

なお、次回は来年、フランスで開催される。
28日に公表された共同宣言は、日本経団連ホームページ( URL=http://www.keidanren.or.jp/japanese/policy/2010/041.html )に掲載。

パネル討議

各国経済界代表が参加したパネル討論

「世界経済の回復と金融部門の改革‐さらに何をなすべきか」

御手洗会長は、世界経済の持続的な成長の実現には、各国が経済のパイを拡大し、雇用の創出につなげるよう、努力を継続することが不可欠と強調した。また、大きな潜在成長力を有するアジアがその先頭に立つべきとの観点から、さる3月に日本経団連が主催したアジア・ビジネス・サミット(3月25日号既報)の議論を紹介した。

各国代表からは、出口戦略を実施するまでにはしばらく時間が必要との発言があった。また、拡大する財政赤字への強い懸念が示されたほか、雇用の拡大や内需の喚起など持続的成長に向けた課題も指摘された。金融部門の改革については、過度の規制強化が経済全体に悪影響を及ぼすことへの懸念などが表明された。

「貿易から気候変動まで‐グローバル課題にいかに取り組むか」

WTOドーハ・ラウンドの早期妥結には強い政治的意思が必要であると強調された。また、一括受諾方式を改め、合意が可能な分野から実行に移すべきとの意見もあった。

気候変動については、渡副会長が、ポスト京都議定書の国際枠組において確保すべきポイントとして、すべての主要排出国の参加、公平な国別削減目標の設定、技術移転の促進、各国の多様な政策を認める柔軟性の4点を挙げるとともに、排出量取引制度の問題点を指摘した。他の参加者からは、公平な競争条件の確保や主要排出国の炭素市場への参加を求める発言があったほか、技術、イノベーションを通じて持続可能な成長に貢献するのが企業の役割との発言があった。「緑の保護主義」への反対や原子力を含めたエネルギー効率の追求の必要性も指摘された。

「経済成長の原動力‐すべての人々のためにいかに機会を広げるか」

新興国の代表から、活力に富む経済の現状が報告された。インドについては、教育の普及、職業訓練によるエンプロイアビリティーの向上などが一層の成長の原動力になるとの説明があった。ブラジルの代表からは、新たな中間所得層が育ってきているなどの説明があった。中国の代表からは、(1)景気刺激策は外国企業にも恩恵をもたらしている(2)中国として貿易収支の均衡を求めており、実際、輸入は輸出を上回るペースで拡大している――などの説明があった。韓国の代表からは、アジアの役割として、FTA(自由貿易協定)の締結を通じた域外需要依存の軽減、インフラ整備による域内需要の喚起などが挙げられた。豪州については、国際競争力強化が課題であるとの説明があった。

米倉議長は、わが国の経済成長の原動力として、法人実効税率の引き下げなどによる企業の活力・国際競争力の維持・強化の重要性を強調した。世界の経済成長の原動力としては、貿易・投資の自由化の必要性を指摘したうえで、新興国に対し、途上国との貿易促進によって世界全体の包摂的な成長に貢献するよう呼びかけるとともに、投資に関する国際的なルールの必要性を指摘した。

ハーパー・カナダ首相あいさつ

金融・経済危機後の世界経済の統治について、「回復と新たな出発」を目標に各国が責任を共有するとともに、すべての人々に恩恵をもたらすには「啓発された主権」が必要であるとした。また、G20サミットの課題として、これまでの合意事項を実際の行動に移すとともに、説明責任を果たす必要があると強調した。個別問題については、銀行課税に反対する姿勢を明確にしたほか、WTOドーハ・ラウンドの2010年中の妥結について悲観的な見通しを述べた。

【国際経済本部】
Copyright © Nippon Keidanren