日本経団連タイムス No.2998 (2010年5月27日)

クラウドコンピューティングの進化と可能性をめぐり意見交換

−米国セールスフォース・ドットコムのベニオフ会長と


日本経団連は13日、東京・大手町の経団連会館で会合を開催し、米国セールスフォース・ドットコムのマーク・ベニオフ会長兼CEOを招き、クラウドコンピューティング(ユーザー自身がソフトウエアやデータを保有することなく、ネットワークを用いてどこからでも必要な機能だけを利用できるコンピューター利用形態)の進化と可能性について説明を聞いた後、意見交換を行った。

■ マーク・ベニオフ会長の説明概要

当社はこの10年間クラウドコンピューティングへの移行を担ってきた。コンピューターの流れは、メインフレームから、クライアントサーバーやパーソナルコンピューター(PC)へ移り、そしてクラウドコンピューティングの時代となっている。今やアプリケーションのみならず、その開発もクラウド化しており、開発速度は従来の5倍、コストは半減が可能となっている。電力を使うのに顧客自身が発電する必要がないように、コンピューターの利用でもシステム開発は外部に委ね、情報管理のアプリケーションは共有してコストを下げ、顧客は本業に専念することが可能だ。

クラウドコンピューティングの世界ではすでに新しい段階「クラウド2」が始まっている。その兆しの一つは、ツイッターやフェイスブックといったソーシャルメディアの利用者がメール利用者を追い越すという驚くべき事実である。これらによって、人の意思決定の方法やインターネットの使い方が変わってきている。また、スマート・フォンやi‐padなどの携帯性や即時性に優れた機器が普及し、PCが不要になるかもしれない。この点、日本では第三世代の携帯電話が普及し、ブロードバンドも発達しており、この分野で他国をリードしていくことが可能と考える。当社にとっても日本は米国に次ぐ市場である。

■ 意見交換

引き続き行われた意見交換のなかでは、「企業は情報漏洩などに慎重であり、クラウドコンピューティングの信頼性を社会全体で向上させる必要があると考えられるがどうか」との質問に対し、「信頼性向上は最重要課題であり、透明性を確保することで対応している。当社では常にシステムの稼働状況や障害情報を公開している」との回答があった。また、「日本には高度なICTインフラがあり、また多くの人が携帯機器を使っており、このネットワークは大きな可能性を秘めている。さらに、人々の社会性やビジネスマナーの高さなども十分に活用してクラウド2のリーダーとなるべきだ」と力説した。

【産業技術本部】
Copyright © Nippon Keidanren