日本経団連タイムス No.2998 (2010年5月27日)

消費者の集団的被害回復制度の説明を山本・一橋大学大学院教授から聞く

−救済制度の論点などで意見交換/経済法規委員会消費者法部会


日本経団連は18日、東京・大手町の経団連会館で、経済法規委員会消費者法部会(松木和道部会長代行)を開催し、一橋大学大学院法学研究科の山本和彦教授を招き、山本教授が座長代理を務める消費者庁の集団的消費者被害救済制度研究会で検討されている救済制度の論点について説明を聞き、意見交換を行った。山本教授からの説明の概要は次のとおり。

■ 経緯

現在に至る議論は、アメリカの60年代のクラスアクション制度の拡大に端を発するが、それに追随する国は多くはなかった。70年代から80年代にかけようやく、英米法諸国が類似の制度を導入したにとどまり、大陸法諸国では、濫訴の問題が指摘されたほか、既存法制との整合性などの理論的な問題もあったことから、クラスアクションの導入は進まなかった。2000年代に入り、EUを中心に多様な集団的消費者被害救済制度を導入する国が増えた。日本では06年に消費者契約法の改正により消費者団体による差止請求訴訟の制度が導入されたほか、09年には消費者庁設置法の附則において、被害者救済制度の検討をし、必要な措置を講ずるものとされた。

■ 考えられる制度とあり得る制度構成

集団的被害回復制度を考えるにあたっては、制度の目的をどのように考えるかが重要である。制度の態様としては、(1)加害者に対して制裁を科す刑罰連動型(2)消費者被害の予防を図る不当利益剥奪型(3)事後的に被害の回復を図る損害賠償型――の3つが考えられるが、それぞれを区別し政策目的に適合的な制度を導入すべきである。

財産を隠匿するような悪質業者に対しては集団訴訟と切り離して、業務停止命令等の行政処分の前提として消費者庁等に破産申立て権限を認め、破産法上の保全処分によって資産凍結を図るという方策が考えられる。

不当表示など具体的被害の特定が困難な場合には、不当利益を剥奪し、国庫に納めさせる課徴金制度が考えられる。

損害賠償型の制度としては、2段階型の集団訴訟制度を創設することが考えられる。これは、第1段階として被告に消費者被害を生じさせた原因があるかを確認し、第2段階として個々の被害救済を図るものである。第1段階の判決の効力は、原告敗訴の場合には消費者側には及ばないこととすることが考えられる。これにより、第1段階において個々の消費者に対する通知・広告が不要となる。第1段階の提訴主体は認可団体とする。しかし、この案についてもわが国の既存の法体系からすると難しい問題もあり、さらに検討を深める必要がある。

【経済基盤本部】
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