日本経団連タイムス No.3002 (2010年6月24日)

「日本産業の成長戦略を考える」

−山田・みずほコーポレート銀行産業調査部長から聞く/経済政策委員会企画部会


日本経団連の経済政策委員会企画部会(村岡富美雄部会長)は14日、東京・大手町の経団連会館で会合を開催し、みずほコーポレート銀行の山田大介産業調査部長から、「日本産業の成長戦略を考える」をテーマに説明を聞いた。概要は次のとおり。

■ 日本経済の現状

足元の日本経済は、中国の爆発的な需要増に伴う輸出の増加に支えられ、総じて一服した感がある。しかし、中国では資産バブルの懸念があり、また輸入増への反動から自国内生産のウエートを高めることも予想されるため、今後日本から中国への輸出に変調が生じるおそれがある。人口減少・少子高齢化が進行し、エネルギー・食糧自給率が先進国中、劣位にあるなかで、日本が持続的な成長を達成していくためには、「ものづくり」を武器として、「貿易+投資立国」「環境対応と経済成長の両立」を図っていく必要がある。

■ 「ものづくり」は日本の生命線・宿命

輸出依存型の日本の産業構造は、そう簡単に変えることはできない。そこで、波及効果が大きい自動車・電機・鉄鋼等の輸出型大企業に対して、法人税減税や投資減税、開発助成等を通じて競争力を強化、再構築していくことと同時に、電気自動車等の次世代産業の育成や、コンテンツ等のサービス産業の勃興を後押ししていくことが求められる。他方、成長著しい新興国市場では、今後旺盛なインフラ需要が見込まれており、こうした需要を獲得していくためには、官民連携のオール・ジャパンという発想だけではなく、日本企業が海外の現地企業と組んで事業を行う、ジャパン・イニシアティブという考え方も重要となる。

■ 「貿易立国」から「貿易+投資立国」へ

以前の日本の枠組みは、「グローバル化=輸出振興」であったが、最近は「グローバル化=現地化」という色彩が濃くなっている。この背景として、アジア新興国のボリュームゾーンを対象とした市場では、比較的安価な汎用品が中心となるため、最終消費地である新興国において、部品の現地調達から生産まで一括して行うようになったことが挙げられる。その結果、雇用の中心は現地の中国人、インド人となり、国内の雇用機会は相対的に減少することとなった。このようななかで国内雇用と外貨の獲得を両立させていくためには、コアとなる高品質の部品を日本国内で断続的に生産し、汎用部品は現地調達するといったすみ分けの戦略が必要である。あわせて、日本の投資収益率は他国よりも低いため、アジア新興国等へのM&Aを含む直接投資を加速することで収益率を高めていくことが求められる。

■ 環境対応と経済成長の両立

温室効果ガス排出量は、産業部門では省エネ技術の向上によって低減傾向にあるのに対し、民生部門では一貫して増加傾向にある。こうした状況を打開し、環境と経済の両立を図っていくためには、民生部門への抜本的な対策が不可欠である。具体策としては、規制改革等を通じた老朽化ビル等の建て替え促進が挙げられる。建て替え促進は、CO2の削減効果も、内需拡大効果もともに大きく、また、日本がシステムとして世界へ売り出していくことができる有望な成長分野となり得る。

【経済政策本部】
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