日本経団連タイムス No.3003 (2010年7月1日)

ポラード欧州委員会政策担当官と懇談

−EU−ETS(EU排出量取引制度)の仕組みを聞く


日本経団連は6月14日、東京・大手町の経団連会館で、ヴィッキー・ポラード欧州委員会気候行動総局政策担当官との懇談会を開催し、EU‐ETS(EU排出量取引制度)の仕組みについて説明を受けるとともに、懇談した。ポラード政策担当官の説明概要は次のとおり。

■ EU‐ETSの仕組み

EU‐ETSはCO2排出量の削減を義務付ける制度として、2005年の1月に導入された。EU内の約1万1500の事業所に排出枠の上限を設定しており、これはEUにおけるCO2総排出量の約50%に当たる。

EU‐ETSは、フェーズ1(2005〜07年)、フェーズ2(2008〜12年)、フェーズ3(2013〜20年)、フェーズ4(2021年以降)の各段階に分けられており、現在は、フェーズ2を実施しながら、フェーズ3の制度を設計している。

また、EU‐ETSでは、一定量に限り、京都メカニズムクレジットを排出枠の達成に使用することができる。このクレジットは、EU‐ETSのコストを押し下げ、発展途上国での温暖化防止行動にインセンティブを与える。

■ 気候変動・エネルギー包括法との関わり

2009年4月にEUで採択された気候変動・エネルギー包括法は、2020年度までの温室効果ガスの削減目標として、1990年度比20%を掲げている。また、気候変動に関する十分な国際的合意がなされる場合には、削減率を20%から30%に増加させることとしている。

この包括法は、(1)EU‐ETSの改訂(2)共同分担の決定(3)再生可能エネルギー指令(4)CCS(CO2回収・貯留)指令――の4つの法令で構成されている。EU‐ETSは、この包括法の一部をなす制度であり、エネルギー多消費部門を対象としている。

■ 2013年以降の排出枠

2013年以降のEU‐ETSにおける排出枠の設定方法は、電力部門はオークション方式による有償割当とし、産業部門は、原則として有償割当であるが、炭素リーケージのおそれのある部門については、無償割当を行う。

産業部門の無償割当のため、約50のベンチマークを設ける。これにより、産業部門の排出量の約80%がカバーできる。ベンチマークは2007〜08年の平均排出実績をもとに設定する。

2013年以降の総排出枠は、毎年1.74%の削減を行い、2020年には、CO2排出量を2010年比で20%削減する予定である。

【環境本部】
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