日本経団連タイムス No.3003 (2010年7月1日)

企業が取り組む環境活動を包括的に学ぶ

−「環境基礎講座」を新規開講


日本経団連事業サービス(米倉弘昌会長)は、日本経団連が推進してきた環境自主行動計画や自然保護活動、国内外の動向などを踏まえ、企業が取り組む環境活動について包括的に学ぶ「環境基礎講座」を新規開講した。
同講座は、企業・団体の環境活動の再構築を担う責任者や担当者を対象として、6回シリーズで実施されるもの。
6月22日に東京・大手町の経団連会館で行われた第1回講座には、約50名が参加し、「総論」として企業が環境問題に取り組む意義や企業に期待される役割・今後の課題について、2名の専門家から講演を聞いた。

「日本の企業と環境問題」

まず、日本環境教育フォーラムの岡島成行理事長が、「日本の企業と環境問題」と題して講演。岡島理事長は、新聞記者として環境関連の取材を続けてきた経験から、現代の環境問題は、複雑に拡大し、地球温暖化にみられるような“人々の生き方の問題”になりつつある点に特徴があると指摘した。また、わが国における環境問題の流れについて、(1)足尾鉱毒事件をはじめとする明治以来の公害問題(2)1980年代初頭までの戦後の公害問題(3)80年代中ごろからの自然破壊の問題(4)80年代後半からの地球環境問題――が存在すると概括。戦後の公害問題においては、4大公害裁判を転機として、企業が公害対策に力を入れるようになったと指摘した。また、地球環境問題に関しては、92年のリオ・サミット以降、日本企業の地球環境問題への取り組みが本格化し、平岩経団連による地球環境憲章の取りまとめや経団連自然保護基金の設立などが、それらの動きを加速したと述べた。

さらに、今後の企業戦略としては、(1)環境問題への対応を本業に組み込んで競争力の一部とする(2)本業とは別にCSRとして、NGOとの連携、国内における環境教育支援、途上国支援等に取り組む――などが重要であるとした。特に、途上国では公害と地球環境問題が同時発生している状況があるため、途上国の立場を踏まえながら、進出先等での支援を考える必要があると語った。

最後に、岡島理事長は、「歴史的にみて、わが国の環境問題における企業の影響力は大きい。また、個別企業にとどまらず、産業界としての対応レベルが高いことがわが国の特徴であり、わが国産業界が動けば、世界の環境対策に影響を及ぼすこともできる」との考え方を示した。

「企業が視野に入れるべき環境問題」

講座の後半には、日本経団連の椋田哲史常務理事が登壇。「企業が視野に入れるべき環境問題」として、(1)地球温暖化対策をめぐるリスク要因(2)環境と経済の両立に向けた技術戦略の重要性(3)循環型社会の形成(4)環境リスクの軽減(5)グリーン・イノベーションによる成長(6)生物多様性問題――と多岐にわたる内容について講演した。特に、温暖化対策をめぐるリスクとしては、日本政府が掲げる「2020年に温室効果ガスを90年比25%削減」という目標について、(1)技術導入による削減可能量を目標値が大きく上回るなど実現可能性に疑問がある(2)削減対策費用がGDP成長率を3〜6%弱押し下げるほど莫大である――等の問題を指摘した。

また、産業界における取り組みとして、経団連が97年から「環境自主行動計画」を推進し、08年度には90年度比10.5%のCO2排出削減を達成した実績を紹介。さらに、参加業種・企業が世界最高水準の低炭素技術やエネルギー効率の維持・向上を社会に公約する「日本経団連低炭素社会実行計画」の具体化を進めていることにも言及した。

グリーン・イノベーションによる成長の実現に関しては、最先端技術の普及・促進に向け、初期需要の喚起、規制改革の推進とモデル・プロジェクトの実施、国際貢献支援などの政策が必要とした。最後に、企業が環境問題に取り組む意義について椋田常務は、「ビジネスチャンスの1つであり、また、率先して取り組むことで、政府による不合理な規制を排除していくこともできる」と総括した。

参加者からは、「環境に関する諸問題を体系的に説明してもらい、理解しやすかった」「今後の取り組みの参考となった」等の声が上がった。

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今後、日本経団連環境基礎講座は、「循環型社会に向けた取り組み」「地球温暖化対策」「環境コミュニケーション」等のテーマを取り上げ、各回とも、(1)専門家による講演(2)企業の取り組み事例報告(3)参加者間の情報交換・討議――という構成で、今年12月まで開催する。詳細に関する問い合わせは日本経団連事業サービス(電話03‐6741‐0042)まで。

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