日本経団連タイムス No.3006 (2010年7月22日)

提言「企業の競争力強化に資する会社法制の実現を求める」公表

−経済界の基本的考え方を提示


日本経団連(米倉弘昌会長)は20日、提言「企業の競争力強化に資する会社法制の実現を求める−会社法制の見直しに対する基本的考え方」を取りまとめ公表した。
日本経団連では、一昨年秋以降政府の審議会等でコーポレート・ガバナンスに関する議論が活発化したことを受け、昨年4月に提言「より良いコーポレート・ガバナンスをめざして(主要論点の中間整理)」(以下、中間整理)を公表した。その後も関係各方面で、会社法制の見直しに関する検討が展開され、今年4月から法制審議会会社法制部会で、本格的な改正の議論が開始された。そこで、改めて経済界としての基本的な考え方を示すものである。
提言の概要は次のとおり。

1.基本的な考え方

まず、会社法制は、すべての日本企業の事業活動を支える重要な法的インフラであり、日本企業の競争力を強化し、産業の健全な発展に資することを目指すべきである。
具体的には、(1)会社法はすべての会社を対象とする基本法であり、わかりやすいものでなければならない(2)各方面から指摘されている問題点は、本当に会社法に起因しているのか、すなわち立法事実があるのかどうか精査すべき(3)諸外国の制度から安易な移植を行うことなく、日本の社会・風土に適したものとすべき(4)会社法を改正することによって、各方面への影響を十分検討するとともに、企業活動を委縮させないよう、画一的な規制は避けるべき(5)先般の役員報酬の個別開示をはじめとして、すでに金融庁や証券取引所の規則が過大な規制を課している現状から、さらに、会社法が重畳的な規制を課すことのないように留意すべき――という考えの下に検討すべきである。

2.企業統治のあり方

基本的なガバナンスの仕組みとして、現行の、監査役会設置会社と社外取締役が強制される委員会設置会社の選択制を、今後も維持していくべきである。ガバナンスは形式ではなく、実質で評価されるべきであり、社外取締役の設置義務化などの一律・形式的なルールを課すべきではない。
従業員から監査役を選出する制度が労組などから提案されている点については、従業員の代表としての立場と、会社全体の利益を考えるべき監査役の立場とが相矛盾する場合が容易に想定され、制度として成り立ち得ない。
会計監査人の選任議案や報酬を、監査を受ける会社の執行部が決定するのは不適当ではないかという、いわゆる「監査のインセンティブのねじれ」の議論があるが、これらの事項について同意権を持つ監査役の権限を十分に発揮させられる体制づくりこそが重要である。

3.親子会社に関する規律

親会社の株主保護のため、親会社株主が子会社の取締役の責任を直接追及できる、いわゆる二重代表訴訟の導入については、親子会社とはいっても法人格は別であり、また子会社の経営に問題がある場合は、子会社の株主である親会社の監督責任を問えば十分であると考える。
また、子会社の重要な意思決定について親会社株主総会の承認手続きを要することとしてはどうかとの議論があるが、経営の効率性を著しく損なうと同時に、子会社の独立性を否定するものとして、経営の側面からも、法制度としての整合性の観点からも、適切な制度とはいえない。

なお、提言本文は、日本経団連ホームページ(URL=http://www.keidanren.or.jp/japanese/policy/2010/068/honbun.pdf)を参照のこと。

【経済基盤本部】
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