日本経団連タイムス No.3006 (2010年7月22日)

「新たな防衛計画の大綱に向けた提言」発表

−わが国防衛産業政策のあり方など提示


日本経団連は20日、「新たな防衛計画の大綱に向けた提言」を発表した。同提言は、今年3月の「防衛産業政策に関する調査ミッション」の成果も踏まえ、今年末に政府が策定する新たな「防衛計画の大綱」および「中期防衛力整備計画」に対して取りまとめたものである。
概要は次のとおり。

■ 防衛産業の現状と環境変化

防衛産業には大企業だけでなく多くの中小企業が関わっている。しかし、防衛関係費の減少が続き、主要装備品の新規契約額は漸減しているため、撤退する企業が出るなど産業基盤が弱体化している。
環境変化としては、第1に、米国等からの最先端の防衛技術の提供が制限されていること、第2に、世界経済危機に端を発する厳しい経営環境のなかで、民生部門のリソースに依存した防衛事業の運営が困難になったことが挙げられる。

■ 欧米の基盤強化策

米国では、今年2月に国防省が「4年ごとの国防計画の見直し」で、防衛産業基盤の強化の必要性を初めて指摘した。
欧州では、イギリスやフランスは装備品ごとの取得政策を明確にしており、防衛企業は効率的で安定的な開発・生産ができる。
また、NATO等を通じて共同プログラムを推進し、防衛産業の競争力を強化している。

■ わが国としての防衛産業政策のあり方

新しい武器輸出管理原則
方針
  • 武器輸出三原則等による武器輸出および武器技術供与の実質的な全面禁止の状況を改め、個別案件について、その内容や、最終の輸出先、用途の観点から総合的に審査する。
  • 大量破壊兵器拡散防止、テロ等の脅威の根絶のため武器輸出および武器技術供与の管理体制を構築し、国際的な枠組みの中でわが国としての取り組みを確立する。
判断基準
  • わが国並びに国際社会の安全保障や平和維持への貢献の観点から総合的に判断する。
管理体制
  • 輸出管理当局は関係省庁間の情報交換や連携強化を図り、規制対象の明確化、個別案件の審査に関する考え方の公表等により輸出管理の透明性を向上させる。

■ 防衛における宇宙開発利用の推進

防衛計画の大綱において、早期警戒衛星やロケット等による防衛目的の宇宙開発利用とインフラとしての射場の整備を盛り込む必要がある。

■ 新たな防衛計画の大綱への期待

わが国の安全保障にかかる基本方針を明確に示したうえで、長期的観点に立った防衛産業政策の策定を防衛計画の大綱に盛り込み実行することが必要である。

【産業技術本部】
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