日本経団連タイムス No.3006 (2010年7月22日)

東北地方経済懇談会を仙台で開催

−農業活性化や環境問題などで意見交換


日本経団連と東北経済連合会(東経連、高橋宏明会長)は14日、仙台市内のホテルで第43回東北地方経済懇談会を開催した。懇談会には、日本経団連から米倉弘昌会長をはじめ副会長、評議員会副議長らが、東経連からは高橋会長をはじめ会員約200名が参加、「民間活力で経済を再生し世界に貢献する」をテーマに意見を交換した。

開会あいさつした東経連の高橋会長は、東北経済が持ち直しの動きにあることを認識しつつも、先行きへの懸念を示した。政府には、スピード感を持って「新成長戦略」を着実に実行に移すことを求めるとともに、東北地方においても、広域的に連携しながら、東北のポテンシャルを活かした産業活性化への取り組みを着実に積み重ねていくべきと訴えた。そのうえで東北が自立的に発展していくための重点施策として、(1)産学官連携による地域産業の競争力強化と産業集積の促進(2)東アジア経済圏との連携強化(3)地域の成長基盤となる社会資本の整備・利活用の促進――の3つを挙げた。

続いてあいさつした日本経団連の米倉会長は、グローバル競争のさらなる激化、デフレ下での経済の低迷、少子高齢化に伴う将来への不安の広がりなど、内外の諸課題に直面するなか、財政の健全化や成長戦略が早期かつ着実に実行に移されることが何よりも重要と指摘。日本経団連としても、政治との対話を一層深めたいと述べた。また、世界トップレベルの技術力を有する日本は、環境をはじめわが国の強みを発揮できる分野での技術開発・イノベーションに一層の磨きをかけ、新たな需要とビジネスチャンスを創出し、経済の再生と持続的な発展に結び付けていくべきであり、民間サイドからの成長戦略の具体策について、検討していきたいと抱負を述べた。

■ 活動報告

第1部の活動報告ではまず日本経団連側から、森田富治郎副会長が「税・財政・社会保障の一体改革の推進」、西田厚聰副会長が「成長戦略の実現に向けて」、渡辺捷昭副会長が「電子行政の推進」、池田弘一評議員会副議長が「道州制実現への取り組み」について報告した。

一方、東経連側からは、藤崎三郎助副会長が「地域産業の競争力強化に向けて」を報告。東経連事業化センターを中心に、知的財産権の確保、マーケティング戦略の立案と実行、大手企業とのアライアンス支援、提携交渉に関する法務支援――など、東経連の産業育成に向けた取り組みを説明した。

次に、福井邦顕副会長が「科学技術振興を通じたイノベーションの推進」を報告。日本が国際競争力をつけ、経済成長を図るためには、国と地域がそれぞれの役割を担いながら一体となって科学技術イノベーションを推進することが重要と指摘。そのうえで、「グリーンイノベーション」および「ライフイノベーション」に、東北の風土が育てた「農」「食」の分野のイノベーションを加えた「ナチュラル・イノベーション」に取り組むと述べた。

続いて、松澤伸介副会長が「東北におけるグローバル戦略」を報告。産学官からなる「東北国際物流戦略チーム」による、東北港湾のポートセールスを効果的に実施するための取り組みを説明した。また、北海道・東北の官民でつくる「北海道・東北未来戦略会議」において、地域産品の輸出促進を図る活動を展開していることを紹介した。

東北経済の現状も

■ 意見交換

第2部の意見交換では東経連側から、(1)東北経済は、自動車関連産業の進出や東北新幹線の青森延伸など、明るい材料はあるものの、景気回復の遅れに加え、少子高齢化の進行、社会資本整備の遅れなどにより活力が低下している状況(2)東北の経済活性化には、グローバル港湾と高速道路の有機的な連結など、高次な機能を広域的に共有する高速交通ネットワークの整備が必要不可欠(3)食料供給機能の確保に向けた農商工連携の強化や、担い手が不足する林業と、公共事業が減少している建設業が連携して地域の再生を図る「林建共働」など、一次産業の活性化が必要(4)企業のCO2削減努力が限界に達し、新たな技術の開発・導入のためのコスト負担も大きくなっている現状において、政府の財政支援の下、最新の省エネ技術の導入を促進すべき。また、国内排出量取引制度の創設にあたっても、企業の生産活動を無理に制限することのないような制度設計をすべき(5)裾野の広い観光産業を、日本の経済成長のエンジンとすべく、異業種との連携などにより観光関連ビジネスの新展開を図るべき――などの意見が出された。

これに対し日本経団連側が、(1)あらゆる政策手段を総動員して「新成長戦略」や「財政運営戦略」を実現することが、日本の持続的な経済成長には不可欠(森田副会長)(2)企業誘致や観光振興、防災など東北地方の具体的なニーズを満たせるようなグランドデザインを描いたうえでインフラ整備を進めるべき(清水正孝副会長)(3)農業の成長産業化に向け、農業界との連携・協力を推進し、農産物の高付加価値化、販路の拡大に貢献したい。林業を再生すべく、森林資源の活用や他産業との連携強化に向けた規制・制度改革を検討する(池田評議員会副議長)(4)2050年のCO2半減に向け、わが国企業は世界最高のエネルギー効率を実現し続けるべき。環境と経済の両立という観点からはライフサイクルアセスメントと国際貢献が重要である(坂根正弘副会長)(5)日本の観光産業発展のためには、観光コンテンツの強化、効果的な情報発信、交通インフラ・情報インフラの整備が不可欠(大橋洋治副会長)(6)環境・エネルギー分野をはじめ成長力強化に資する分野への重点的な予算配分、産学官連携の強化やクラスター形成等を通じた、地域主導のイノベーションを創出する環境の整備など、科学・技術・イノベーション政策を一体的に推進すべき(原良也評議員会副議長)――と発言した。

【総務本部】
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