日本経団連タイムス No.3006 (2010年7月22日)

BOPビジネスシンポジウムを開催

−日本企業の強みや政府の支援策をめぐり議論展開


ユヌス総裁

日本経団連は14日、東京・大手町の経団連会館で、日本貿易振興機構(ジェトロ)、国際協力機構(JICA)と共催で、シンポジウム「BOPビジネスに向けた企業戦略と官民連携」を開催した。BOPビジネスは、約40億人の年間所得3000ドル以下の低所得階層(Base of the Economic Pyramid、BOP)を対象とするもので、近年わが国でも関心が高まっている。、当日は約500名が参加した。

冒頭、矢野薫国際協力委員会共同委員長は、開会あいさつのなかで、「環境・エネルギー関連分野の技術など、わが国企業の強みを有効に活用してBOP層の社会的課題改善に貢献し、ともに成長したい」と述べ、日本政府のBOPビジネス支援の推進と途上国政府の投資や知的財産権保護を通じた支援を求めた。

続いて基調講演を行ったバングラデシュのグラミン銀行創設者のムハマド・ユヌス総裁は、10万人を超える低所得階層に起業や教育の機会を与えるマイクロ・クレジットの仕組みを紹介し、「企業の創造エネルギーを活用すればあらゆる分野でビジネスによる課題解決の可能性がある」と強調した。

ダノン・グループのエマニュエル・ファベール共同最高執行責任者は、BOP層が購入できるような低価格のヨーグルトを実現するために、徹底的に原材料や製造・流通コストを削減して成功した経験を紹介した。

■ パネルディスカッション

「BOPビジネスに向けた企業戦略と官民連携」をテーマとしたパネルディスカッションでの主な発言は次のとおり。

<福林憲二郎国際協力委員会政策部会長(住友化学専務)>

自社の技術を生かした「オリセットネット(殺虫効果のある蚊帳)」によりマラリア感染者の拡大防止に貢献。持続的な事業とするためには適切なリターンの確保が重要。BOPビジネス拡大には、(1)迅速かつタイムリーな資金の提供(2)情報の提供(3)人材確保のための支援――が必要。

<林康夫ジェトロ理事長>

BOP市場は有望な潜在中間層であることから、ジェトロとしても、(1)出資(2)BOP層の潜在ニーズ情報の提供(3)調査支援――などを通じて日本企業のBOP市場進出を後押ししたい。

<大島賢三JICA副理事長>

BOPビジネスでは計画から実施、評価までをJICAが一緒に行う新たな官民連携の枠組み構築が必要。JICAは、(1)調査支援(2)海外投融資などの資金支援(3)情報提供(4)相手国政府との折衝――などで支援したい。

<黒田かをりCSOネットワーク共同事業責任者>

ミレニアム開発目標の達成には企業の関与が不可欠。NGOと日本企業がBOPビジネスで、もっと連携できるとよい。

<ファベール共同最高執行責任者>

ソーシャル・ビジネス(環境、福祉、教育などの社会的課題に取り組む事業体のこと。BOPビジネスと目的は同じだが、利益追求を目的にしない点で異なると主張する論者もある)の推進には、社会貢献を推進するための社内ガバナンスの確立が必要である。

<ユヌス総裁コメント>

バングラデシュはじめ途上国では電力インフラが未整備のため、現在、太陽光発電が普及しつつある。これを支援できる蓄電用バッテリーの製造販売が期待できる。

【国際協力本部】
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