日本経団連タイムス No.3007 (2010年7月29日)

夏季フォーラム2010を開催

−「民主導でいかに成長を実現するか−新しいWIN-WIN(互恵関係)を目指して」を統一テーマに


日本経団連(米倉弘昌会長)は22、23の両日、長野県軽井沢町のホテルで「夏季フォーラム2010」(議長=佐々木幹夫副会長)を開催した。同フォーラムには、米倉会長、渡文明評議員会議長をはじめ、副会長、評議員会副議長ら34名が参加。統一テーマに「民主導でいかに成長を実現するか−新しいWIN-WIN(互恵関係)を目指して」を掲げ、企業を取り巻く国内外の構造変化を踏まえ、わが国企業や経済界に対する期待とその対応、民間主導の成長戦略などについて、活発な意見交換を行った。討議の結果は23日、「アピール2010 民主導で経済成長を実現する−新しいWIN-WIN関係を目指して」として取りまとめ、公表した。

米倉会長ら34名参加し軽井沢で

第1セッション「世界のなかのニッポンのあり方、日本企業・経済界への期待と進むべき道など−国際社会や経済活動のなかでのWIN-WIN」では、外交ジャーナリスト・作家の手嶋龍一氏、慶應義塾大学経済学部教授の木村福成氏、京都大学iPS細胞研究所所長の山中伸弥氏がそれぞれ講演。手嶋氏は、経済成長の礎は自由な市場経済であり、それを共有する日米関係の重要性を踏まえつつ、自らの文化や伝統を大切にして、アジアとの結び付きを強めていくべきとの外交の展望を示した。また、木村氏は、研究開発、流通等を含めた生産ネットワークの「国際的な工程間分業」が進んでいる実態を指摘し、各企業が国際化を通じて競争力を確保するとともに、日本に残すべき生産ブロックを特定し、その立地優位性の確保が必要とした。山中氏は、最先端技術の研究者という立場から、研究成果に関する知的財産権の確保、産学連携、社会への情報発信などが重要性を増しており、それらを担う人材の確保と体制づくりの必要性を指摘した。さらに、槍田松瑩副会長が国際関係について、榊原定征副会長が科学技術・イノベーションについてそれぞれ課題提起を行った後、全体で討議を行った。

第2セッション「国民の視点からみた日本企業や経済界への期待等−社会とのWIN-WINをいかに築いていくか」では、雪印メグミルク社外取締役の日和佐信子氏、慶應義塾大学大学院教授の金子郁容氏、スポーツプロデューサーの三屋裕子氏が講演した。日和佐氏は、消費者目線から見た企業や日本経団連への期待として、社員に対する消費者教育の実施、コンプライアンス・CSRを基本とした経営の確立、企業と消費者とがそれぞれの立場を堅持したうえで対等かつ良好な関係を構築していく必要性を挙げた。また、金子氏は、「新しい公共」円卓会議の座長を務めた立場から、「私」である企業も「公」の役割を果たすことの重要性を述べたうえで、地域医療を例に挙げ、成長戦略の実現には、技術革新だけでなく、社会的な関係がポジティブな方向に変化する「社会イノベーション」が不可欠であると説明した。三屋氏は、国民の企業に対する判断・評価の多くはメディアを通じたものであることから、リスクが現実となったときの対応や、「企業側から伝える」ことの重要性を指摘した。さらに、佃和夫副会長がCSRについて、坂根正弘副会長が環境と経済の両立について課題提起した後、自由討議を行った。

第3セッション「成長に向けての企業・経済界のアクション等−新しいWIN-WINに向けてのアクション」では、森田富治郎副会長、西田厚聰副会長が課題提起を行った後、わが国の競争力強化に向け、企業、日本経団連として何ができるかについて討議した。

討議の結果取りまとめられた「アピール2010」には、(1)世界経済のパラダイムチェンジへの対応(2)社会の健全な発展を担う企業のミッション(3)企業・経済界自らのアクション――の3項目が盛り込まれ、経済成長の実現に向けた決意が示された(各セッションの概要は次号掲載予定)。

夏季フォーラム終了後、米倉会長と佐々木議長が記者会見を行い、フォーラムの成果について語った。

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なお、米倉会長は26日首相官邸を訪ね、菅直人総理に「アピール2010」を手交した。

米倉会長(左)と「夏季フォーラム2010」の
議長を務めた佐々木副会長
【政治社会本部】
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