日本経団連タイムス No.3007 (2010年7月29日)

民主導の持続的な経済成長実現へ

−提言「『新成長戦略』の早期実行を求める」公表


日本経団連は20日、提言「『新成長戦略』の早期実行を求める」を取りまとめ、公表した。提言は、足元の企業活動の変化を踏まえつつ、重要政策の実施がわが国の経済や雇用へ与える影響について分析を行い、改めて「新成長戦略」の早期かつ着実な実行を求めたもの。概要は次のとおり。

■ 事業環境の国際的なイコール・フッティングの確保が急務

グローバル競争が一層激しさを増すなか、わが国企業は日々、生き残りをかけて事業活動を展開している。他方、各国では、企業活動を活発化させ、経済成長と雇用の維持・創出につなげる取り組みを加速させている。このような状況にあって、わが国の政策対応が他国に後れを取ることがあってはならない。高い法人税負担、労働市場の流動性の欠如、不合理な温室効果ガス排出削減目標などを解決し、わが国の事業環境について、国際的なイコール・フッティングの取り組みを進めなければ、企業の経営環境の先行きに対する不透明感を拡大させ、生産活動の海外移転を必要以上に促すといった空洞化をもたらしかねない。同時に、海外からの投資や優れた人材を呼び込むことも、より困難なものとなる。

その結果、仮に景気が本格的に回復しても、雇用の拡大につながらないおそれがある(ジョブレス・リカバリー)。また、空洞化が進めば、中長期的にも、経済社会の活力が減退し、国内における雇用機会そのものを失うことが懸念される。国内の生産活動が停滞し、海外生産比率のみが上昇すると仮定して機械的に試算すると、2010年度から5年間の合計で、約60兆円の国内需要(売上)と300万人規模の雇用機会を喪失し、失業率は5%ポイント程度の悪化が見込まれる。

■ 「新成長戦略」の早期・着実な実行

こうしたなか、今年6月に政府が閣議決定した「新成長戦略」は、わが国経済が抱える主要課題の解決に向け、定量的な目標や時間軸の設定を含め、具体的な取り組みを示しており、評価できる。持続的な経済成長と雇用の創出を実現するため、「新成長戦略」で示された方針に基づき、予算措置や関連法制度の改正、規制改革等を、多面的かつ重層的な官民連携の下、危機感とスピード感を持って大胆に実行していくことが強く求められる。

■ 2020年度までの平均で名目GDP1.5%ポイント押し上げ、雇用370万人増加

「新成長戦略」には、新たな需要や雇用の創出に向けた対応とともに、生産性向上や供給能力強化のための施策も盛り込まれている。これに関連し、日本経団連が主張する税制改革や財政・社会保障制度改革、行政・規制改革などのうち、法人税負担の実質的な引き下げや消費税率の引き上げなど、具体的な数値を示すことが可能な施策に限って、それらを実施した場合の効果を試算した。それによると2020年度までの平均で名目GDPの伸び率は1.5%ポイント、実質GDPの伸び率は0.3%ポイント押し上げられ、雇用は約370万人増加するとの結果を得た。また、財政収支が改善する効果も期待される。

このような点も踏まえ、政治の「強いリーダーシップ」の下、「強い経済」「強い財政」「強い社会保障」の具現化に向け取り組むべきである。とりわけ、わが国の財政が先進国中最悪の状況にあることを考慮すれば、その遂行は待ったなしの状況である。

■ 経済界自らの持続的成長に向けた取り組み

企業は、国民生活に必要な財やサービスを提供するとともに、雇用機会を創出するなど、成長を牽引する役割を担っていることから、企業活力が向上すれば経済が成長し、国民生活も一層豊かになる。そのような観点から、経済界としては、成長戦略全体の担い手としての役割を遂行するとともに、民間活力の発揮によって持続可能な経済成長を実現していくために、民間の発意によるプロジェクトの推進を図っていく。

【経済政策本部】
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