日本経団連タイムス No.3007 (2010年7月29日)

最近の農政の動きについて説明を聞き意見交わす

−井出農水事務次官と/農政問題委員会


日本経団連は8日、東京・大手町の経団連会館で農政問題委員会(小林栄三共同委員長、廣瀬博共同委員長)を開催し、農林水産省の井出道雄事務次官から、今年3月に閣議決定された新たな食料・農業・農村基本計画をはじめ最近の農政の動きについて説明を聞くとともに、意見交換を行った。
概要は次のとおり。

今回の「食料・農業・農村基本計画」では、食料・農業・農村政策を国家戦略と位置付け、国民全体で農業・農村を支える社会の創造をうたっている。

こうした観点から、基本計画では、食料自給率の目標を45%から50%へと引き上げた。また、小規模農家も含め意欲あるすべての農家が安心して農業を継続できる環境を整備する観点から、戸別所得補償制度を導入することとした。さらに、食の安全・安心の確保の観点から、食品の生産・加工・流通の各段階における安全性管理機能の向上に向け、GAP、HACCP等の工程管理に取り組むこととした。加えて、地域内で新たな付加価値を創出し、雇用と所得を確保するという観点から、農業・農村の6次産業化に取り組むこととしている。

特に、食料自給率50%の達成に向けて、消費面では、国産小麦や米粉の消費拡大を図るとともに飼料自給率の向上を図っていく。また、生産面では、わが国農地のフル活用を図るべく、水田での麦・大豆の生産を促し、また麦・大豆の栽培に向かない地域では飼料用米・米粉用米などの増産を促していく。

こうした観点から、今年度から実施している「米戸別所得補償モデル対策」では、「水田利活用自給力向上事業」を通じて、水田で主食用米以外の作物をつくった場合にも主食用米をつくったときと同等以上の収入が得られるよう支援水準を設定した。また、「米戸別所得補償モデル事業」を通じて、主食用米についても米の需給調整への参加を前提に、標準的な生産コストと販売価格との差額を全国一律の水準で補填することにしている。

■ 意見交換

以上の説明に対し、出席者からは、国民が必要とする食料を確保する観点からは自給率を高める一方で、海外からの輸入の安定的確保のための方策も必要といった意見や、農業の6次産業化を進めるためにはマーケティングができる人材の確保が重要といった意見が出た。また、農産物の輸出促進やWTO・EPAへの対応といった観点からも農業の競争力強化が重要であり、そのために経済界としても協力したいなどの意見も出された。

【産業政策本部】
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