日本経団連タイムス No.3009 (2010年8月12日)

峰崎財務副大臣を迎え税・財政の抜本的改革で論議

−第71回シンポジウム開催/21世紀政策研究所


21世紀政策研究所(米倉弘昌会長、森田富治郎理事長)は7月9日、東京・大手町の経団連会館で、第71回シンポジウム「税・財政の抜本的改革に向けて」を開催した。同シンポジウムでは、21世紀政策研究所がこの1年「税制抜本改革と実現後の経済・社会の姿」という研究プロジェクトに取り組んできた成果を発表するとともに、税・財政の諸課題について問題提起やパネルディスカッションを行った。6月に閣議決定された政府の新成長戦略のなかで法人税率引き下げの方向性が打ち出されたことや、参院選で消費税引き上げが争点になったこともあり、出席者は200名を超えた。

森田理事長は開会あいさつで、「わが国の長期債務残高は先進国のなかでも突出した水準にあり、税・財政の抜本的改革は待ったなしの状況である。改革によって財政破たんを回避し、経済再生の道筋を示すことが喫緊の課題である」と述べ、わが国財政への強い危機意識と抜本的改革の必要性を表明した。

続いて、来賓の峰崎直樹財務副大臣が、「新政権と税制改革議論」と題して基調講演。峰崎副大臣は、わが国財政の状況や社会保障費の伸びを考えると国民負担率のアップは不可避であるが、社会保障の水準を上げていきつつ、財政再建も考えていくという難しい対応を迫られるとの見解を示した。

続いて、研究主幹の森信茂樹中央大学法科大学院教授、ならびに委員の田近栄治一橋大学副学長、土居丈朗慶応大学経済学部教授、佐藤主光一橋大学国際・公共政策大学院教授が、税・財政の諸課題について問題提起を行った。

パネルディスカッションでは、森信教授をモデレーターとして、先のメンバーに菖蒲静夫キヤノン経理部担当部長、阿部泰久日本経団連経済基盤本部長も加わり、税・財政改革の進め方をめぐり活発な議論が展開された。

法人税引き下げについては、国際的な引き下げ競争への懸念や課税ベースの拡大の必要性が言及された。一方、課税ベースの拡大では多くても2〜3%程度の引き下げ財源にしかならない、国際競争力の観点からは国税だけでなく地方法人税にも踏み込まざるを得ないのではないかという指摘や、税収中立的では何のための引き下げかわからない、企業の前向きな投資インセンティブをなくすべきではないといった意見が出された。

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シンポジウムでの議論の詳細については、近く21世紀政策研究所新書として刊行予定である。

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