日本経団連タイムス No.3009 (2010年8月12日)

飛鳥船上で合宿講座開催

−日本経団連フォーラム21


活発な討議を展開した日本経団連フォーラム21の合宿講座

「大人は子どもに背中を見せられるか?」――。6月に開講した第21期日本経団連フォーラム21の飛鳥合宿で、パネル討議を前に基調講演を行った茂木賢三郎アドバイザーは、少子化問題を中心に教育、そして日本の国柄について多くの問題を提起した。講演を受けてフォーラムメンバーは、茂木アドバイザーをコーディネーターに、山内昌之東京大学大学院教授、寺島実郎三井物産戦略研究所会長の両アドバイザーを交え「日本の進路を考える」を総合テーマに活発な討議を展開した。

基調講演で茂木アドバイザーはまず、情報判別力の重要性に触れ、通説や多数説の誤りを具体的事例で紹介。噂や伝聞、流言などをうのみにして付和雷同することの危うさを指摘した。

また、日本が抱える多くの問題のなかでも、公教育の劣化や国内治安の悪化、規範意識の劣化といった「社会的安定感のゆらぎ」に強い懸念を示し、この状況が生まれた根本に、国の基となる人づくり(教育)に問題があるのではないかと疑問を投げかけた。

さらに茂木氏は、少子化についても量的・質的両面から多くの問題点を指摘、社会的安定感を取り戻すためにも、日本社会の長期ビジョンを確立し社会的価値観の大転換を図ること、ビジョンに基づき長期的“最適”を実現する信念を持つことなどを示唆した。

その後のパネル討議では、メンバーの関心事項として挙がった(1)経済運営のパラダイム(2)少子高齢化(3)環境(4)教育(5)政治(6)外交・安全保障――などをテーマに、茂木、山内、寺島各アドバイザーを交え活発な意見交換が続いた。

討議ではメンバーから、中国、韓国をはじめとする東アジア諸国の教育や人材戦略などについて、自身の経験や実例をもとに多くの意見が上がった。

寺島アドバイザーは、20年後にはアジアが世界のGDPの4割を占める時代になることを示し、ASEAN、インドを含め国境を越えた地域連携の仕組みが重要であると主張。そのなかで日本には、大きな世界観に立った内政・外政一体の総合戦略を求める構想力が必要であることを強調した。

山内アドバイザーは中国について、「成長を続ける可能性があり、日本として望ましいことではあるが不透明感も増大するのではないか」と意見を述べ、高齢化や年金、労働争議など人口圧力が作用するさまざまな問題が起こり得ることを指摘した。

飛鳥合宿を受け同フォーラムは、8月第1講座で小川和久・国際変動研究所理事長が日本の安全保障について、第2講座で関志雄・野村資本市場研究所シニアフェローが中国経済の現状と課題について講演。9月には中村桂子・JT生命誌研究館館長が「生命から見直す現代社会‐日本文化のもつ意味」について、第2講座では藤原和博・前杉並区立和田中学校校長が学校と地域社会をテーマに講演する予定。

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日本経団連フォーラム21は1980年にスタートし、今年度21期を迎えた。参加メンバーは日本経団連会員企業で、トップの推薦を受けた経営幹部。これまでに600名近い修了生を送り出した。
チーフアドバイザーを日本経団連会長が務め、企業トップ、学識経験者らがアドバイザーとして講演やディスカッションを通じて指導・助言に当たる。
日本経団連フォーラム21に関する問い合わせは、日本経団連事業サービス研修担当(電話03‐6741‐0042)まで。

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