日本経団連タイムス No.3010 (2010年8月26日)

物流・流通産業の今後の方向性で議論

−委員会の活動方針などの検討も/運輸・流通委員会


日本経団連の運輸・流通委員会(宮原耕治委員長)は7月29日、東京・大手町の経団連会館で会合を開催し、神奈川大学の中田信哉教授から、「物流・流通産業の現状とありうべき政策の方向性について」と題して、説明を聞くとともに、意見交換を行った。
概要は次のとおり。

中田神奈川大学教授に説明聞く

■ 流通の課題と対応

物流と流通の両方でキーワードとなるのは「絞り込み」である。民主党のマニフェストもそうであるが、いろいろと政策を並べると、実際には相互に矛盾や齟齬が生まれて、大変難しいことになる。もう少し簡単に考えて、絞り込んで重点的に取り組む方がよい。
流通の課題と対応としては、(1)消費の停滞への対応(2)商品価格の低下問題への対応(3)国際化への対応(4)地域問題への対応(5)店舗経営問題への対応(6)地球環境問題への対応――という視点でとらえることができる。市場の変化を的確にとらえて対応することがポイントとなる。

■ 物流の課題と適合性

物流については、流通と比較して、より政策にしやすい部分がある。物流の課題と適合の問題としては、(1)地域的適合(2)地球環境的適合(3)国際的適合(4)戦略的適合(5)経営的適合(6)論理的適合――というとらえ方ができる。特に、論理面での物流教育に関しては、高校・大学でも講座がほとんどないため、人材も出てこない。課題のなかから絞り込みやプライオリティー付けをして取り組むべきであり、それを経済界から提言してほしい。

■ 意見交換

出席者からは、「海外では最近、港湾に都市型の公園をつくって、ターミナルを別に移すなどのウォーターフロントの開発が進んでおり、東京や横浜でも機能ごとに場所を移して効率化を図ることができるのではないか」「日本の物流は規制が厳しく、権限が縦割りになっていることで競争力を落としている」といった発言があった。これに対し、中田教授からは、「コストでは釜山港にかなわないので、例えば、川崎港は陸上施設にして東京港と横浜港の機能を吸い上げるなど、別のやり方で競争すべきである」「既得権もあるのでやりづらい面はあるだろうが、貨物利用運送事業法等の国土交通省が管轄している法律は複雑すぎるので、シンプルにすべきである」といったコメントがあった。

■ 委員会の活動方針

また、会合の終盤では、運輸・流通委員会としての今後の活動方針について議論を行った。その結果、物流分野については、ポートオーソリティーの創設を含む、運輸産業の国際競争力強化に向けた検討を進めることとし、流通分野については、昨今の社会環境の大幅な変化を踏まえて、流通産業における事業環境の改善に向けた検討を進めることとした。

【産業政策本部】
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