日本経団連タイムス No.3011 (2010年9月2日)

景気対策および成長戦略としての都市政策のあり方で説明を聞く

−八田政策研究大学院大学学長と意見交換/都市・地域政策委員会


日本経団連は8月26日、東京・大手町の経団連会館で都市・地域政策委員会(岩沙弘道委員長)を開催し、八田達夫・政策研究大学院大学学長から、今後の都市政策のあり方について説明を聞くとともに意見交換を行った。八田学長の説明の概要は次のとおり。

■ 景気対策の方法

景気対策の方法として、消費を刺激する方法と公共投資を刺激する方法がある。前者については、耐久財の消費に的を絞った景気対策を行う必要がある。住宅投資の促進策はその好例である。後者については、首都圏の三環状道路や羽田空港の拡充など将来わが国として投資が不可欠な公共投資を優先して行うのがよい。
規制緩和もお金がかからない景気刺激策として非常に有効である。2000年代初頭に行われた工場等制限法の廃止、都市再生特別措置法による都市再生特別地区の設置等の規制緩和は有効であった。

■ 失敗した成長戦略

成長戦略とは基本的には構造改革である。得する人と損する人がいるが、長期的に得となる政策を行うという意味で痛みを伴う。そのため、費用と便益について中立的な判断が必要となる。
わが国の経済成長率をみると、1960年代の高度成長を経て、74年を境に成長率が下がっている。これはオイルショックの影響とともに、大都市への人口流入の減少や大都市と地方との所得格差の縮小によるところが大きい。この背景には当時、「国土の均衡ある発展策」が採用されたことがある。規制で大都市への集中が妨げられ、地方への再分配が行われた結果、長期的な低迷が続いた。
また本来、都市に人や企業が集中するのは、移動時間やコストが低くてすむ「集積の利益」があるからである。しかし、大都市内で都心周辺に分散させる都心分散策、具体的には容積率規制がとられた。その結果、集積の利益が抑制され、通勤混雑がさらに激しくなり、都心居住が阻害された。

■ 今後の都市の成長戦略

都市に関する景気対策は成長戦略にもなる。今後の都市の政策課題としては、都心のマンションの容積率緩和、老朽化した建築物の建て替えの障害となっている各種決議要件や借地借家法上の正当事由等の規制緩和などがある。あわせて、長期的な戦略の下での公共投資も必要である。具体的には、環状道路、都市計画道路、立体道路、緑地や風の道の整備を行うとともに、横浜や大阪、神戸などでの在来線と新幹線、あるいは空港と新幹線の接続を行う必要がある。

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当日は、八田学長の説明に続き、「平成23年度都市・土地・PFI税制改正に対する要望」および「未来都市モデルプロジェクト中間報告」の審議が行われ、委員会として了承した。

【産業政策本部】
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