日本経団連タイムス No.3012 (2010年9月9日)

「持続可能な活力ある社会を実現する経済・雇用システム」で説明聞く

−働き方の改善や全員参加型社会構築など/雇用委員会


説明する樋口教授

日本経団連は2日、東京・大手町の経団連会館で雇用委員会(篠田和久委員長)を開催し、樋口美雄・慶應義塾大学商学部教授から、厚生労働省雇用政策研究会の座長として取りまとめに当たった報告書「持続可能な活力ある社会を実現する経済・雇用システム」について説明を聞いた。概要は次のとおり。

報告書は、近年の経済環境・労働市場等の変化や課題を考察し、政府の新成長戦略における2020年の目標を見据えつつ、わが国が今後、持続可能な活力ある社会を実現するため、重点的に取り組むべき3つの政策展開を提言している。

第一に、非正規労働者の増加に伴い、給与格差や能力開発機会の多寡などの正規・非正規の二極化構造が問題視されるなか、雇用の質が向上する働き方の改善が必要である。そのため、不本意ながら非正規となった者にターゲットを絞った政策を展開するとともに、雇用形態の多様化が求められる。多様化の推進にあたっては、従来の正規と非正規の中間に位置する職種限定・勤務地限定正社員といった「多様な正社員」を労使が選択し得る環境を整備することが望まれる。さらに、賃金・処遇の改善を図りつつ、労働時間の見直しなどによるワーク・ライフ・バランスの実現を通じて二極化構造を解消することが重要である。

第二に、労働力人口の減少が見込まれるなか、若者や女性、高齢者などの意欲と能力を十分に発揮できる就業環境・労働市場を構築し、「全員参加型社会」を実現することが重要である。そのため、フリーター対策などさまざまな就労促進策と企業内および公的部門による能力開発支援を推進することが不可欠である。また、経済の不確実性が増すなかで、セーフティーネットの整備などを通じ、再挑戦可能な「トランポリン型社会」の構築が必要である。

第三に、雇用機会の創出が必要である。労働力人口は消費の担い手としての側面も持っており、その減少は消費需要の制約要因となる。国民が安定した雇用所得を得ることで消費を拡大し、需要不足を解消することが期待できるため、雇用の量的拡大が求められる。そのためには、従来の政府と民間による雇用創出のみならず、NPOや社会的企業といった中間的組織の役割が重要となる。

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当日は、樋口教授の説明に続き、「大学卒業予定者・大学院修士課程修了予定者等の採用選考に関する企業の倫理憲章」等の見直し、および「2010年度雇用・労働分野における規制改革要望(案)」の審議が行われ、委員会としていずれも了承した。

【労働政策本部】
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