日本経団連タイムス No.3016 (2010年10月14日)

松本環境相ら環境省幹部と懇談

−地球温暖化、循環型社会、生物多様性など


あいさつする松本環境相

日本経団連(米倉弘昌会長)は4日、都内で環境省幹部との懇談会を開催した。懇談会には、環境省から松本龍大臣、近藤昭一副大臣らが、経団連から米倉会長、渡文明評議員会議長、副会長らが出席した。

冒頭あいさつした米倉会長は、経団連が2013年以降のポスト京都議定書において、産業界の温暖化防止への主体的な取り組みをさらに強化すべく、「低炭素社会実行計画」を推進していることに言及。今後とも、日本企業の技術力を十分に活かし、低炭素社会の実現に向けて世界をリードしていきたいとの決意を表明した。そのうえで、世界的に厳しい経済情勢にもかかわらず、環境政策について唯一規制強化を行う国として、国内外に「アンチビジネス」のメッセージを送っているのではないか、と産業界の懸念を表した。

続いてあいさつした松本大臣は、地球温暖化対策基本法案に盛り込まれている(1)国内排出量取引制度(2)地球温暖化対策税(3)再生可能エネルギーの全量買取制度――の3つの施策について、産業界の意見を聞きながら取り組んでいきたいと述べた。また、静脈産業の育成という観点から廃棄物のリサイクルを推進していくとする一方、10月下旬に名古屋で開催されるCOP10(生物多様性条約第10回締約国会議)に向けた議長国としての決意を表明したうえで、産業界の協力を求めた。

■ 意見交換

意見交換では、経団連側から、COP10に向けた経団連の生物多様性に対する具体的な取り組みや、循環型社会形成に向けた環境自主行動計画、3R促進に向けた制度見直し・運用改善の必要性などについて説明があった。また、地球温暖化問題について、「日本の産業界はすでに世界最高水準のエネルギー効率を実現。環境と経済の両立を図る観点から、生産段階のみならず、商品・サービスの消費段階に至るライフサイクル全体での産業界の取り組みを勘案してほしい」「今年11−12月にメキシコで開催される国連気候変動枠組条約第16回締約国会議(COP16)では、地球温暖化対策の実効性や国際的公平性の観点から、京都議定書の単純延長という合意は絶対に避けていただきたい」「高い法人税負担など、すでに高コスト構造となっているわが国に、国内排出量取引制度はじめ3つの施策が導入されれば、企業の競争力や研究開発の原資を奪うばかりか、導入の議論そのものが企業の投資マインドを大きく悪化させ、国内投資抑制の要因となる。3つの施策を個別に議論するのではなく、全体の費用負担や効果を明示したうえで、国民生活や産業の国際競争力に与える影響を十分考慮し、制度の導入の是非を含め議論を行うべき」などの発言があった。

これに対し、松本大臣は、最先端技術の開発・普及に尽力してきた産業界のライフサイクル全体での取り組みや国際貢献に敬意を表すとともに、「COP16において、京都議定書の単純延長ということのないように、議論することが重要である」と述べた。また、「3つの施策について、引き続き産業界の意見を聞きつつ、個別ではなく一体的に議論するよう努めたい」と発言した。

【環境本部】
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