日本経団連タイムス No.3016 (2010年10月14日)

アジア債券市場シンポジウムを開催

−社債市場整備における発行体や機関投資家の役割中心に


アジア債券市場整備の現状と展望を聞いた
アジア債券市場シンポジウム

日本経団連は1日、東京・大手町の経団連会館で、アジア債券市場シンポジウムを開催し、レオン・シンガポール通貨監督庁エグゼクティブ・ディレクター、河合正弘・21世紀政策研究所「アジア債券市場整備と域内金融協力に関する研究会」研究主幹・アジア開発銀行研究所所長、金融機関などからアジア債券市場整備の現状と展望を聞いた。
各講演者の発言要旨は次のとおり。

1.シン・チョン・レオン・シンガポール通貨監督庁エグゼクティブ・ディレクター

アジア債券市場整備の展望については、(1)中長期的に債券ポートフォリオの多様化ニーズが国際的にあること(2)低金利環境が起債の魅力を高めていること(3)個人投資家拡大の兆しがみられること――から、楽観視している。ただし、(1)短期資本によるバブル懸念(2)長期資金需要への不十分な仲介機能(3)アジア債券市場の細分化――といった構造問題がある。アジア開発銀行(ADB)と連携してこれらの課題に取り組んでいる。今後は、発行体や機関投資家といった民間市場関係者と連携し、その専門性を活かして債券市場の深化を進めていきたい。

2.河合正弘・21世紀政策研究所「アジア債券市場整備と域内金融協力に関する研究会」研究主幹(アジア開発銀行研究所所長)

アジア債券市場整備は、(1)インフラ整備資金(2)多国籍企業への現地通貨建ての長期資金(3)年金基金等の長期投資先――を提供する点で重要である。そのために社債発行や流動市場整備を促すことが大切であり、(1)信用保証機関の規模拡大(2)アジアの格付け機関間の協調(格付けの一元化)(3)社債市場のキャパシティ・ビルディング(4)決済インフラの整備(5)東京市場の活性化――などが必要である。

■ 証券会社

アジア債券市場の発展には、サムライ債(円建て外債)市場の拡大が有益である。この点で国際協力銀行の保証スキームは重要な役割を果たしており、さらに活用していきたい。

■ アジア開発銀行

アジア債券市場の流動性向上のためにも、多様な投資家の増加が必要だ。ADBは、機関投資家育成のため、各国の社会保障制度の改革や投資ファンド法制の整備を支援している。また、発行体や投資家には、積極的な市場参加、信用保証機関の活用、各国法制の調和に向けた提言を期待する。

■ 生命保険会社

資産規模の大きいわが国の機関投資家がアジア債券投資を拡大するには、流通市場の活性化が必要である。イールドカーブの形成がその前提となる。また、残存期間の長い円金利資産を選好する生保にとっては、投資対象が高格付けであることが不可欠であり、これを満たす金融商品の拡大を期待している。

【国際協力本部】
Copyright © Nippon Keidanren