日本経団連タイムス No.3016 (2010年10月14日)

政策提言と検証のあり方について聞く

−岡本義朗・三菱UFJリサーチ&コンサルティング主席研究員から
/政策検証委員会企画部会


日本経団連の政策検証委員会企画部会(高尾剛正部会長)は9月30日、東京・大手町の経団連会館で会合を開催し、三菱UFJリサーチ&コンサルティングの岡本義朗主席研究員から、政策提言と検証のあり方について説明を聞き、意見交換を行った。説明の概要は次のとおり。

1.政策の体系化

政策とは、理論上「ある社会状況を改善するために、ひとつの(いくつかの)目的に向けて組織化された諸資源および行動」(龍慶昭・佐々木亮(2000)『「政策評価」の理論と技術』)と定義される。政府はこの政策を「政策(狭義)」「施策」「事務事業」の3つに区分して体系化したうえ、主に「施策」を対象として政策評価を行っている。こうした体系化には、政策評価の対象とする政策が、どのような目的のもとにどのような手段を用いるものかという対応関係を明らかにする意義がある。

2.既存の「評価・レビュー」

現在政府では、政策評価法に基づき、各府省が「施策」レベルを対象として、自ら評価を実施すると同時に、別途、総務省行政評価局が点検を行うことで、客観性を担保した「政策評価」を行っている。また、複数の府省にまたがる政策についても政策の統一性または総合性を確保する観点から評価を行っている。

この政策評価と予算編成の連携を強化することが、かねてから課題となっていたが、2008年度予算からは、概ね「施策」レベルで、政策評価の単位と、予算書の表示科目の単位(項・事項)に整合性を持たせることとなった。

このほか、政府内で実施されている「評価・レビュー」は、主に「事務事業」レベルを単位としており、財務省主計局による「予算執行調査」、行政刷新会議が新たに導入した「行政事業レビュー(各府省版事業仕分け)」などがある。これらは予算統制・予算カットの性格が強い。

「政策(狭義)」レベルを対象とするものとしては、昨年、新たに「政策達成目標明示制度」の導入が閣議決定された。この制度の特徴は、政府として省庁横断するかたちで最優先の目標を具体的に明示し、各目標について、達成度を客観的に検証可能な「達成指標」と「達成計画」を定めることなどである。

3.経団連の政策提言の実効性向上に向けて

こうした制度が政府で運用されるという前提のもと、経団連が行う政策提言の実効性を高めるためには、政府のPDCAサイクルで重視される「施策」レベルの取り組みをより明確化・具体化することが肝要と考えられる。加えて、概算要求時に各府省が財務省へ提出する政策評価調書のなかで、内閣の重要政策に相当するものとして、経団連の政策提言が反映されるような仕掛け・働きかけができれば、政策提言の実効性をより高めることが可能となろう。

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なお、当日は岡本主席研究員の説明に続き、経団連での政策検証の進め方等について、事務局から説明を行い、意見交換した。

【経済政策本部】
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