日本経団連タイムス No.3016 (2010年10月14日)

民法改正の労働法への影響聞く

−山川・慶應義塾大学大学院教授が説明/労働法企画部会


講演する山川教授

日本経団連は9月29日、東京・大手町の経団連会館で労働法規委員会労働法企画部会(庄司哲也部会長)を開催し、山川隆一・慶應義塾大学大学院法務研究科教授を招き、民法改正の労働法への影響について、講演を聞いた。山川教授は、法制審議会で検討されている民法(債権関係)改正について、雇用の規定で大きな改正は予定されていないといえるが、民法の一般規定の見直しが、労働契約の実務に与える影響が大きくなることを指摘した。講演の概要は次のとおり。

■ 雇用規定と労働契約法

民法の雇用契約と労働法の労働契約の相違について、同一説、峻別説の2つの考え方があるが、現在は同一説が有力である。同一説にたてば、両者の統合が問題となる。将来的に雇用規定を労働契約法に統合していくことが望ましいと考えられる。民法改正提案(債権法改正の基本方針、以下試案)でもこの考え方が取られている。

法制審議会では、10月以降、雇用の規定を審議することになる。試案では、雇用の規定について、当面は維持するとして、大きな改正は提案されていない。唯一問題となりそうなのは、629条の有期契約の黙示の更新の規定の見直しである。現行法では、期間の定めのある雇用契約について、黙示の更新がなされる場合の効果として、「同一の条件で更に雇用をしたものと推定する」とされており、試案では、この同一条件に「期間の定めを除く」という文言を追加して明確化している。現行法の解釈で期間を含めるかどうか、学説でも肯定説、否定説に分かれているので、今後議論になるところである。

■ 関連する改正提案・検討事項

雇用規定以外の民法の一般的な契約に関する規定の改正が、労働契約法のみならず労働契約に関する実務にどのような影響を与えるかの検討が、むしろ重要になってくるのではないか。

例えば、試案では、約款についてさまざまな提言がされているが、労働契約でいえば、就業規則が約款に該当するかどうかが問題となる。該当すれば、労働契約法の就業規則の法理と提案されている約款とでは、組み入れ要件などで相違があるので、労働契約法を見直さなければならないのか議論になるであろう。

【労働法制本部】
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