日本経団連タイムス No.3017 (2010年10月21日)

「イノベーション創出に向けた新たな科学技術計画の策定を求める
〜科学・技術・イノベーション政策の推進」を公表

−課題解決型イノベーション推進など提起


日本経団連(米倉弘昌会長)は19日、提言「イノベーション創出に向けた新たな科学技術基本計画の策定を求める〜科学・技術・イノベーション政策の推進」を公表した。
現在、政府の総合科学技術会議において、2011年度から開始される第4期科学技術基本計画の年内の取りまとめに向けた議論がヤマ場を迎えている。
経団連では、科学技術の振興を目的とした従来の科学技術政策から、イノベーション創出までを視野に入れた「科学・技術・イノベーション政策」への転換を主張しており、その基本的な考え方は、6月に中間的に取りまとめられた「科学技術基本政策策定の基本方針」でも取り入れられた。提言では今後、この考え方が具体的施策として最終取りまとめに盛り込まれるよう求めている。概要は次のとおり。

■ 課題解決型イノベーションの推進

新成長戦略でも柱と位置付けているグリーン・イノベーション、ライフ・イノベーションの2大イノベーションを重点的に推進するとともに、産業競争力の強化等の重要課題の解決に向け、ICTの利活用、新たなものづくり技術の強化も強力に推進する必要がある。

■ 司令塔機能の強化

科学技術政策の司令塔である総合科学技術会議は、権限・機能が限られている。現在、政府において同会議の改組が検討されているところであり、7つの提案をする。
具体的には、(1)設置法や科学技術基本法等の見直しを通じた法的権限の強化(2)ICT戦略、知的財産戦略、国際標準化戦略、高等教育政策等の関連政策の一体的推進(3)独自予算制度創設も含む予算・資源配分に関する権限・機能の強化(4)産業界出身議員を半数以上とする議員構成の見直し(5)シンクタンク機能の付与も含めた事務局・調査分析機能の強化(6)民間の意見が反映されるための「プラットフォーム」の創設(7)組織の統合・再編も含む研究開発法人の見直し――である。

■ 大学・大学院の改革

イノベーション創出の究極の源泉は、人にある。諸外国では、イノベーション創出に向けた人材育成に関する取り組みを強化しており、わが国においても、人材育成の場として重要な大学・大学院の改革が必須である。具体的には、(1)カリキュラムの充実や体系的コースワークの構築等による国際水準の教育の提供(2)高度な専門性を持つ博士号取得者が社会の多様な場面で活躍できるための環境整備(3)教員採用にあたっての教育経験の必須要件化や、産業界からの教員受け入れ拡大の推進等の教育への積極的取り組み(4)運営費交付金の傾斜配分等による自主的な改革のモチベーションの付与(5)産学官連携による次代を担う人材の育成――が必要である。

■ イノベーション創出に向けた仕組みの整備

イノベーション創出に向け、不可欠と思われる点はほかにも多い。(1)従来型の純粋な基礎研究のみならず、イノベーション創出を強く意識した目的の明確な基礎研究への重点的な投資(2)産学官連携による「つくばイノベーションアリーナ」(TIA)の推進(3)実施主体、具体的目標、目標達成時期を記した工程表の策定を通じたPDCAサイクルの確立(4)新成長戦略で掲げられた「官民あわせた研究開発投資を対GDP比4%」の達成に向けた政府による研究開発投資の対GDP比1%超への拡大、および研究開発促進税制の拡充・恒久化(5)規制改革・実証実験・政府調達の実施――が重要である。

【産業技術本部】
Copyright © Nippon Keidanren