日本経団連タイムス No.3017 (2010年10月21日)

第58回北海道経済懇談会開催

−民間活力による経済再生などテーマに


札幌で開催された第58回北海道経済懇談会

日本経団連と北海道経済連合会(道経連、近藤龍夫会長)は13日、札幌市内のホテルで「第58回北海道経済懇談会」を開催した。懇談会には、経団連側から米倉弘昌会長をはじめ副会長らが、道経連側からは近藤会長はじめ会員約200名が参加し、「民間活力による経済の再生と持続的成長の実現」を基本テーマに、活動報告と意見交換を行った。

開会あいさつのなかで道経連の近藤会長は、北海道の経済情勢について、低調な個人消費や公共事業の削減など、依然として厳しい状況にあると説明した。そのうえで、北海道経済の自立的発展に向けて、(1)「食産業」の発展による内発型産業への転換(2)社会資本の整備(3)地域主権型社会の形成――の3つがポイントになると指摘。特に、北海道の強みである農水産業では、流通業、観光業など周辺産業との連携による「食の総合産業」を確立することが重要との認識を示した。

続いてあいさつした経団連の米倉会長は、改造内閣発足に際して建議した「新内閣に望む」に触れ、「新成長戦略」の早期実現、税・財政・社会保障の一体改革に向けて、政府に対し、全力で取り組むよう強く求めたことを説明した。加えて、「民間活力による成長」の実現に向けて、「未来都市モデルプロジェクト」の具体化に向けた取り組みや、「APEC CEOサミット」の開催などについて説明し、道経連に対して理解と協力を呼びかけた。

■ 活動報告

第1部の活動報告では、経団連から、渡辺捷昭副会長が「税制改正への取り組み」、榊原定征副会長が「科学・技術・イノベーションの推進」、佃和夫副会長が「企業行動憲章の改定」、大橋洋治副会長が「地域経済統合の拡大・深化ならびにインフラ整備」を報告した。「税制改正への取り組み」では、(1)法人税負担の軽減(2)環境税の安易な導入の反対(3)自動車・燃料関係諸税の簡素化・軽減――などを政府に求めたことを報告。「科学・技術・イノベーションの推進」では、“課題解決型”イノベーション政策の推進や科学技術関連予算の拡充、研究開発促進税制の恒久化などを求めたことを報告した。「企業行動憲章の改定」では、CSRをめぐる内外の動向を踏まえ、商品・サービスの安全性確保や環境対策の強化などの改定内容を報告。「地域経済統合の拡大・深化ならびにインフラ整備」では、アジア太平洋自由貿易圏(FTAAP)の完成に向けて、日中韓FTAの早期締結を求めたことなどを報告した。

一方、道経連からは、林光繁副会長が「食クラスター活動の推進」、坂本眞一副会長が「北海道観光の展開」、横山清副会長が「人口減少・少子高齢化における高速交通ネットワーク整備の必要性」についてそれぞれ報告。

「食クラスター活動」では、「食クラスター連携協議会」の発足や、研究開発機能の集中化に向けた国際戦略総合特区への提案内容が報告された。「北海道観光の展開」では、航空会社とタイアップしたモニターツアーや、ポートセールスなどの取り組みが報告され、「人口減少・少子高齢化における高速交通ネットワーク整備」では、整備効果として、産業基盤の強化などにより15年間で約3兆円の生産押し上げ効果があるとの試算結果が報告された。

■ 意見交換

第2部の意見交換では道経連から、(1)農商工連携の推進に向けた具体的取り組み(2)当面の経済政策(3)APEC地域の成長戦略(4)「日本型成長モデル」の具体的内容と地域の活性化(5)中長期を展望した産業界における人材育成や学校教育のあり方(6)地方自治体の行財政基盤強化に向けた見解――の6点について質問があった。

これに対して経団連は、(1)「地産地消セミナー」や「農商工連携セミナー」の開催、栽培支援システムなどのITを活用した経営支援(三浦惺副会長)(2)成長するアジアの需要の積極的な取り込み、税・財政・社会保障の一体改革(氏家純一副会長)(3)アジア太平洋地域におけるシームレスな事業環境の実現(渡辺副会長)(4)労働参加率や有望分野の潜在需要掘り起こしなど、需給両面における取り組みの一体的推進と、重要インフラの早期整備、医療・介護サービスのネットワーク化(森田富治郎副会長)(5)大学教育における教育の多様性、初等中等教育段階からの企業の教育への関与(川村隆副会長)(6)道州制の導入による中央集権型統治の改革、地方消費税の充実などによる自主財源の充実(西田厚聰副会長)――が必要と応じた。

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懇談会に出席した日本経団連首脳は翌14日、国内外の一流血脈を受け継ぐ種牡馬を多数繁養する「社台スタリオンステーション」、広大な放牧地と調教施設を誇る「ノーザンファーム」(いずれも勇払郡安平町)を訪問、ディープインパクトをはじめとする往年の名馬や、調教施設などを視察した。

【総務本部】
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