日本経団連タイムス No.3017 (2010年10月21日)

報告書「課題解決型の福利厚生の実現に向けて」発表

−自助努力支援施策の必要性指摘


日本経団連は19日、報告書「課題解決型の福利厚生の実現に向けて」を発表した。経団連は、企業の持続的成長の実現のカギを握る人材力の向上に向けて、経営者のリーダーシップの発揮を促している。同報告書は、福利厚生が従業員の能力の向上・発揮において果たす役割について検討し、取りまとめたものである。報告書の概要は次のとおり。

■ 従業員を取り巻く状況

企業の生産性の向上のためには、従業員の能力と意欲を最大限に発揮することが欠かせないが、一方で、従業員が抱える課題や不安は、社会のあり方や経済状況の変化に伴って多様化している。例えば、育児や介護と仕事の両立がある。社会保障制度の持続可能性が確保されないなかでは、長期的な生活の安定に向けた備えも課題である。また、メンタルヘルス不調や生活習慣病疾患の治療・予防も重要な課題となっている。さらに、職場では従業員間のコミュニケーションが希薄化し、チームワークが発揮しきれないケースも見られる。

■ 従業員の課題解決に向けた福利厚生施策の活用

これらの課題の特徴は、誰もが経験する可能性がある一方で個別性が高く、解決においては本人の努力が必要となることにある。このため、画一的な施策ではなく、従業員の自助努力を支援するための施策が求められている。
このようななか、人事労務管理施策のなかでも、運営面での柔軟性や費用面での効率性を有する福利厚生が果たす役割は大きくなっている。そこで、同報告書では、施策を大きく3つに分類し、28の事例を交えながら紹介している。

■ 福利厚生施策が果たす役割

第一は「安心して働ける基盤の整備」として、従業員が生涯にわたるさまざまなライフイベントに対応しながら、働き続けられることを目的とした施策を紹介している。
第二は「活発に働ける健康の確保」として、メンタルヘルス不調の予防や生活習慣病の予防・改善などを目的とした施策を取り上げている。
第三は「円滑なコミュニケーションができる環境の確保」として、コミュニケーション機会の創出策などを取り上げている。

■ 福利厚生の運営の視点

福利厚生が果たす役割は増しているものの、総額人件費管理の観点から、総花的に展開できる状況にはなく、固定的なムダの削減と施策の重点化、運営手段の効率性に向けた取り組みが必要である。
今後も企業や従業員を取り巻く環境の変化に対応しながら福利厚生を運営していく必要があることから、運営における留意点を3点にまとめた。
第一に、施策を整備するにあたっては、従業員の自助努力を支援することを目的とすべきである。第二に、変化に柔軟に対応できるよう、費用の固定化を避けるとともに、従業員ニーズやコスト、サービスの質や従業員負担のあり方などについて、日常的に把握すべきである。第三に、課題解決に向けた施策を展開する以上、活発な利用の実現が不可欠であるが、とりわけ、実施する施策を従業員の自助努力を支援する内容とすることから、これまでにも増して、従業員の制度への理解の深化に向けた努力が必要である。

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報告書の詳細は経団連のホームページ(URL=http://www.keidanren.or.jp/japanese/policy/2010/092/index.html)に掲載している。

【労働法制本部】
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