日本経団連タイムス No.3017 (2010年10月21日)

大学改革の現状と産業界への期待について説明を受ける

−文科省審議官に/教育問題委員会企画部会


日本経団連の教育問題委員会企画部会(岩波利光部会長)は4日、東京・大手町の経団連会館で会合を開催し、わが国の大学改革の現状と産業界への期待について、加藤重治文部科学省審議官から説明を受けるとともに懇談した。

加藤審議官は、冒頭、産業界から大学教育に関してしばしば指摘される課題として、次の3つを挙げた。第一は、大学数や学生数が多過ぎるのではないかということである。加藤氏は、「日本の大学進学率は、欧米諸国やアジアの先進国の進学率と比べて決して高くない。また社会人学生比率はOECD諸国平均と比べて極めて低い状況にあり、今後は学び返しの場としての大学の意義を踏まえて、社会人学生比率を高めていく必要がある」と述べた。

第二は、学生の質が低下し、卒業時の学力が保証されていないのではないかということである。加藤氏からは、大学教育の質保証のため、文部科学省では、各大学に体系性、一貫性のある「学位プログラム」を確立し、教育情報を公開するよう指導していることや、各大学の優れた取り組みをグッド・プラクティス(GP)として支援し、年1回、東京で「GPフォーラム」を開催して関係者の間で情報共有を図っていることが紹介された。また質保証の一環として「大学の機能別分化」を進めており、世界的研究・教育拠点、高度専門職業人養成、地域の生涯学習拠点など、各大学が選択した機能に基づいて特徴ある教育を行うよう、カテゴリー別に奨励的な補助金をつけて支援していると説明した。

第三は、日本の将来を担うリーダー層が育成されていないのではないかという問題であり、これに対しては、「政府は、リーダー層のなかでも、産業界からの要望の強いグローバル人材と高度人材の育成に向けた取り組みを強化している」と述べた。具体的な取り組みとして、卓越した専門性を備え、成長分野で世界を牽引するリーダーを養成する博士課程教育を行う「リーディング大学院」構想を実施し、学界だけでなく、産業界や国際機関などで幅広く活躍できる博士人材の育成を目指していることに言及。また、グローバル人材の育成に向けて、新成長戦略の下で、外国大学との単位相互認定の拡大、外国人留学生の戦略的受け入れ、外国人留学生の日本企業への就職支援、日本人学生の留学・研修への支援等を推進していくことをあげた。さらに内向き志向と言われる日本人学生の海外留学を推進するため、まずは短期留学(ショート・ビジット)を推進し、年間7千名の学生を海外に派遣する予定であると説明した。

最後に産業界への期待として、「大学で教育プログラムを編成する段階から企業人に参加してもらい、第一線で活躍する企業人を教員、講師として派遣し、課題解決型の授業や論文作成指導を行ってほしい」「産業界が必要とする人材像を明らかにしてほしい」と述べた。

【社会広報本部】
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