日本経団連タイムス No.3018 (2010年10月28日)

環太平洋経済連携協定(TPP)交渉への早期参加求める

−APEC首脳会議に向けて緊急提言


日本経団連(米倉弘昌会長)は21日、「経済連携協定の一層の推進を改めて求める−APEC首脳会議に向けての緊急提言」を公表した。提言では、APEC首脳会議の場で環太平洋経済連携協定(TPP)交渉への参加を表明し、国を開く姿勢を内外に鮮明にすることによって、アジア太平洋地域を中心に経済連携協定(EPA)を一層強力に推進すべきと強調。この機会を逃せば、国際的な事業環境の整備において諸外国から大きく後れを取ることになるとしている。11月に横浜で開催されるAPEC首脳会議までに決定される予定のEPAに関する基本方針の策定にあたっての考え方は次のとおり。

■ TPP交渉への早期参加

  1. (1)日韓EPAをできる限り早期に妥結するとともに、ASEAN自由貿易地域(AFTA)が域内の輸入関税撤廃を完成する2015年を目途に日中韓FTAを締結することによって、ASEAN+3を完成する。また、先般大筋合意したインドとのEPAに加えて、豪州とのEPAを締結することによって、2015年までのASEAN+6の完成に道筋をつける。

  2. (2)二国間のFTAに対する米国の関心が薄らいでいると見られる現時点において、これらアジア地域における経済統合の動きと米国とを橋渡しする唯一の道は、わが国がTPP交渉にできる限り早期に参加することである。2015年までにTPPを締結することによって、アジア太平洋自由貿易圏(FTAAP)実現に向け、東アジアにおける広域経済連携と並ぶ経済統合の一つの大きな核を形成することができる。
    TPP交渉は、最近マレーシアを加え9カ国で行われており、今後さらに参加国が拡大する可能性がある。わが国としても、門戸が開かれているうちに、できる限り早期に交渉に参加し、わが国の事情を考慮した国境措置の取り扱いなどについて主張していくとともに、新たなルールづくりに積極的に参画する必要がある。

  3. (3)わが国と同盟関係にあり、世界第一の経済大国である米国を含むTPP交渉に参加し、先進的なルールづくりを進めることは、わが国の戦略的な地位を高めることにもなる。その結果、日中韓FTAなど中国を含む枠組みづくりや焦眉の急となっている日・EU経済統合協定(EIA)の来春交渉開始・早期締結にも大いに寄与するものである。なお、大詰めを迎えているペルーとのEPA交渉についても、早期妥結に向け政治のリーダーシップが求められる。

■ わが国農業の構造改革による競争力強化

わが国農業の競争力強化を図るため、新規就農や新規参入を含めた意欲ある多様な担い手の確保、担い手への農地集約による経営規模の拡大と生産性の向上等を図っていかなければならない。政治のリーダーシップの下、これら構造改革を迅速かつ強力に推進するとともに、その進展も見据えた真に必要な国内対策を総合的に講じ、EPAの推進とわが国の食料供給基盤の強化との両立を図るべきである。その際には、ウルグアイ・ラウンド対策事業の効果を改めて検証し、競争力強化につながるような施策を講ずることにより国民負担の軽減につなげなければならない。

経済界としても、農業の成長産業化に向けて、農商工連携の推進や輸出の促進をはじめ、農業界との連携・協力をさらに推進していく。

【国際経済本部】
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