日本経団連タイムス No.3018 (2010年10月28日)

関西企業倫理セミナーを開催

−企業倫理の実践を考える


大阪で開催した関西企業倫理セミナー

日本経団連は18日、大阪市内のホテルで200名を超える参加者を得て、関西企業倫理セミナーを開催した。企業倫理月間のイベントの一環で、関西での開催は今年で4回目。

開会あいさつを行った企業行動委員会社会的責任経営部会の鍛治舍巧部会長は、先日開かれたISO26000関西説明会の盛況ぶりにも言及しながら、社会的責任に対する企業の関心の高さに期待と頼もしさを感じると述べた。

引き続き、慶應義塾大学商学部の梅津光弘准教授が「企業経営に求められる企業倫理活動の実践」と題する講演を行った。

また、講演の後、企業行動委員会企画部会の吉田豊次部会長が、今年9月に改定された企業行動憲章実行の手引きのポイントについて説明した。


<梅津准教授講演要旨>

講演する梅津氏

近年、企業を評価する物差しが変わり、収益性と成長性だけでは良い会社と判断されない。社会に対してどのような責任を果たし、どのような倫理観を持っているかが指標になってきた。

企業倫理を定着させるために、社内体制の制度化は必須である。社是や社訓とは別に、業務の一環として行動規範を扱ったり、担当役員を置いて取締役会に報告や決裁を仰いだり、仕事としての意識を持ってもらう必要がある。できれば、CSR担当役員を経営トップへのキャリアパスとみなし、辣腕の人物を充てるべきである。米国では、倫理・CSR担当役員はトップの信頼が厚い後継候補と評価される。

CSR研修では、座学で講師が話をしても「それは正論だが」という反応になってしまう。むしろ参加者の口から自身の考えを語ってもらうケースメソッドが有用だ。

慶大のCOE調査によると、企業倫理関係の制度設置が進んでいる。一方で営業所や工場、下請けレベルには温度差があり、「やらされ感」がある。しかし、問題は現場で起こり、本社がその責任を負う。規模に応じ、現場に無理を強いない範囲で徹底を図ってほしい。

日本の企業はポテンシャルをCSRに活かせていない。倉庫に眠っている商品や持て余している特許がCSR活動に役立つかもしれない。一度現場の棚卸しをしてみてはどうか。CSR活動の展開を通じた社員の意識改革など、副次的な効果も及ぼす。

グローバルな視点でみると、CSRは話題のテーマで、国際的な行動規範が次々に発行されている。CSRの推進にはまず教育が大事であるが、日本ではおろそかにされている。中国や韓国ではCSR教育を国が推進し、大学に専攻課程を設置している。ハーバードビジネススクールでも今年一番人気の講座は社会起業家論とBOP関連ビジネスだった。

企業倫理は組織改革の起点となるものだ。停滞感漂う日本のムードを払拭するため、企業倫理やCSRを切り口としてもらいたい。

【政治社会本部】
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