日本経団連タイムス No.3018 (2010年10月28日)

大規模水害における企業の対応策などをテーマに

−防災に関する委員会


日本経団連の防災に関する委員会(木村惠司共同委員長、小野寺正共同委員長)は19日、東京・大手町の経団連会館で、会合を開催した。会合では、東京大学総合防災情報研究センター長の田中淳教授が大規模水害の影響ならびに対応策と題して講演、企業での水害対策について地震対策との比較や被害想定のシミュレーションを交え説明を行った。

田中教授はまず、地震対策と水害対策の違いについて、(1)地震は継続時間が短く数秒、数分であるが、水害は継続時間が長く、最終的に水が引くまで1カ月程度かかる場合がある(2)地下は地震には強い構造だが、水害には弱く、地下をつたって浸水エリアが拡大する(3)地震と違って水害には予測可能性が存在することから、予測情報に基づき、どう判断するかが問われる――の3点を指摘したうえで、地震、水害それぞれについて対策を講じる必要性に言及した。

続いて、大規模水害の特徴について、長期湛水(たんすい)で応急復旧の開始が遅れ、災害が長期的に継続すること、また、水とともに土砂が低地やアンダーパスに侵入して、道路交通に障害を起こすこと、さらには、地下に水が浸入することで、地下施設・地下構造物へ大きな影響をもたらすことを指摘。首都圏で大規模水害が発生した場合、内閣府の被害想定によると浸水地域の人口が最大160万人に及ぶことから、160万人分のマーケットが失われる可能性について警鐘を鳴らした。

最後に、現在、建物の倒壊までしか被害想定がなされていないことを踏まえ、防災への適正投資額を見極めるうえでも、防災に関する委員会で、企業の目から見た経済の被害想定を行ってほしいと要望した。

また、委員会では、企業における地震、水害への取り組み状況に関するアンケートの結果も紹介された。アンケートは委員会所属企業245社を対象に9月に実施され、114社より回答を得たもの。地震、水害それぞれについて、災害対策本部の設置や社員と家族の安否確認手段の多層化、訓練の実施、適正な備蓄の実施など10項目について、実施状況を調査している。アンケート結果によれば、地震対策に関しては、回答企業の約8割が10項目のほとんどについて実施していると回答した。一方、水害対策に関しては、家族の安否確認手段の多層化など地震対策と同様の対策となる項目を除き、各項目での実施状況は回答企業の2〜4割程度にとどまった。なお、アンケート結果について、田中教授から、「水害対策については、今後、事業所の立地状況などに応じて、さらに細かく実施状況を確認してはどうか」とコメントがあった。

【政治社会本部】
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