日本経団連タイムス No.3018 (2010年10月28日)

日米欧競争当局カルテル規制セミナー開催

−国際カルテルに対する各国の取り組みを聞く


セミナーでは日米欧各当局の考え方や
今後の方向性などの説明を聞いた

日本経団連は7日、東京・大手町の経団連会館で、「日米欧競争当局カルテル規制セミナー」を開催した。同セミナーは、グローバル化に伴い増加が懸念される国際カルテルなどに対し、近年、各国競争当局が規制や制裁を強化し、当局間の連携を進めていることから、日米欧各当局の考え方や今後の方向性の説明を聞くことを目的としたものである。セミナーには会員企業から約90名が参加した。それぞれの講演の概要は次のとおり。

1.米国(スコット・ハモンド米国司法省反トラスト局次長)

昨今、米国当局の調査等に対する日本企業の対応が大きく変化してきた。リニエンシー制度(競争法に違反した事業者が、自ら違反事実を申告し、当局の調査に協力することで、責任を減免される制度)は、日本国内で導入される以前は、日本企業になかなか浸透せず、申告や調査協力が遅れて減免されないことも多かったが、今ではこの制度を使う日本企業も増えている。また、現在は各国が同時に国際カルテルなどに対する調査を始められるようになったので、対応の迅速性がより重要になっている。企業の協力度合いによって、訴追も含めた当局の制裁が大きく変わることを踏まえた対応が必要である。

2.欧州(サリ・スールナーキー欧州委員会競争当局カルテル局副部長)

EUは現在27の加盟国間で、専門的な知識やノウハウを共有・蓄積して調査等にあたっている。カルテルに断固とした対応を取ることは経済危機のさなかにあっては非常に重要であるが、究極的な目的は違反の摘発ではなくカルテルの予防である。そのため、執行を強化・蓄積し、告発を促進すべく、制裁金の引き上げなど、制裁規定を厳格化する一方、リニエンシー制度によって当局へ協力するインセンティブを強化している。
執行の対象となるカルテルの件数は年々増加しているため、今後は2008年に導入した和解制度の活用などを通じて手続を迅速化・簡素化し、各国競争当局とも連携を強化していきたい。

3.日本(中島秀夫公正取引委員会事務総局審査局長)

2005年の法改正で導入されたリニエンシー制度は、概ね年間70〜80件の申請があり、順調に定着している。
法的措置の対象事案には、官製談合もいまだ多く、発注者となる省庁だけでなく政府全体の取り組みを通じてなくしていくことが必要である。
今後は、現下の厳しい経済状況におけるカルテルの悪質性に鑑み、厳格な対処を続けたい。また、各国当局との実務者レベルでの情報共有や意見交換を通じ、国際カルテルの摘発・予防に対して積極的に関与していきたい。

【経済基盤本部】
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