日本経団連タイムス No.3018 (2010年10月28日)

海外における日本の宇宙システムの利用可能性について説明を聞く

−宇宙開発利用推進委員会宇宙利用部会


日本経団連は13日、東京・大手町の経団連会館で、宇宙開発利用推進委員会宇宙利用部会(西村知典部会長)を開催した。当日は、経済産業省製造産業局の金子修一宇宙産業室長から、海外における日本の宇宙システムの利用可能性について説明を聞くとともに意見交換を行った。説明の概要は次のとおり。

■ 宇宙産業の現状

主要国の宇宙機器産業の売上高を比較すると、日本の2600億円に対し、欧州は約4倍の1兆2800億円、アメリカは日本の17倍の4兆円である。宇宙産業は官需が多いので、政府予算が市場規模の差につながる。アメリカではオバマ政権のもとで宇宙予算が増加傾向にある。
世界の衛星打ち上げ市場については、1999〜2008年の128機が、09〜18年では約260機に倍増すると予測されている。中国やフランスなどは、発展途上国に衛星を売り込んでいる。日本としても、衛星に加えて、利用技術や打ち上げ技術などを含めたシステムとして売ることが重要である。

■ 政府の取り組み

経産省では、高性能小型衛星や空中発射システムの開発と研究を進めている。従来は資源探査分野を中心に、地球観測センサーとデータ解析の研究開発を進めてきたが、今後は、鉱物資源探査に加え環境観測等のために衛星を使うようになる。
今年6月に政府が策定した「新成長戦略」と「産業構造ビジョン」では、宇宙システムのパッケージ化による提供が盛り込まれた。これは政府の宇宙開発戦略本部の重点施策の1つの柱となっている。
また、政府の支援体制としては、関係省庁から構成される「宇宙システム海外展開タスクフォース」や、閣僚で構成される「パッケージ型インフラ海外展開関係大臣会合」が発足している。
さらに、今年8月末から9月にかけて、西村部会長を団長として、ブラジル、アルゼンチン、ペルーの3カ国を訪問する官民合同ミッションを派遣した。わが国政府の取り組みを知ってもらうとともに、相手国の関心を知ることで、ビジネスチャンスにもなる。

■ 今後の展望

日本の宇宙産業の強みとしては、コンポーネントに係る実績、技術力や品質に対する信頼性など、一方、弱みとしては、宇宙コミュニティーにおける認知度不足や国際市場における実績不足が挙げられる。システム輸出に対する機運の高まりや宇宙システム応用分野の市場の拡大傾向が日本にとってのチャンスであるが、円高等の為替要因やエンジニア等の供給不足の懸念がある。

【産業技術本部】
Copyright © Nippon Keidanren