日本経団連タイムス No.3019 (2010年11月4日)

北陸地方経済懇談会を富山で開催

−円高・デフレ対策、観光振興、人材育成など


富山で開催した北陸地方経済懇談会

日本経団連と北陸経済連合会(北経連、永原功会長)は10月26日、富山市内のホテルで第37回北陸地方経済懇談会を開催した。懇談会には、日本経団連から米倉弘昌会長をはじめ副会長らが、北経連からは永原会長をはじめ会員約100名が参加、「民間活力で経済を再生し地域づくりに貢献する」を基本テーマに活動報告と意見交換を行った。

開会あいさつのなかで北経連の永原会長は、北陸経済について、景気は着実に持ち直しているが、エコカー補助金制度などの経済対策の効果減少や円高によって先行きの悪化が懸念されるとの認識を示した。そのうえで、北陸地域の発展に向け、今後、注力すべき分野は観光であると指摘。北陸の豊富な観光資源を活かし、北陸三県が一体となって、国内観光客そしてアジア、特に中国からの観光客の誘致策について精力的に検討していくと述べた。また、北陸新幹線の敦賀延伸に理解と協力を求めた。

続いてあいさつした経団連の米倉会長は、菅改造内閣発足に際して建議した「新内閣に望む」に言及し、円高是正・デフレ脱却への政府・日銀一体となった取り組みや「新成長戦略」の早期実行、税・財政・社会保障の一体改革の推進に全力で取り組むよう要望したと述べた。また、「民間活力による成長」への主体的な取り組みとして経団連が進めている「未来モデル都市プロジェクト」や「APEC CEOサミット」の開催などについて説明し、北経連に対して理解と協力を呼びかけた。

■ 活動報告

第1部の活動報告では、経団連側から、佐々木幹夫副会長が「アジア太平洋地域の持続的成長を目指して」、前田晃伸副会長が「規制改革への取り組み」、佃和夫副会長が「企業行動憲章の改定」、大橋洋治副会長が「雇用の当面の課題と経済界の取り組み」、岩沙弘道副会長が「未来モデル都市プロジェクト」について報告した。「アジア太平洋地域の持続的成長を目指して」では、経団連としてTPP(環太平洋経済連携協定)に積極的に参加すべきと政府に訴えていることを報告。「規制改革への取り組み」では、2010年度規制改革要望について昨年に比べ件数が増え、新規案件も多かったことを紹介。今後要望の実現に努めたいと述べた。「企業行動憲章の改定」では、CSRをめぐる国内外の動向を踏まえ、商品・サービスの安全性確保の重要性を強調したことや環境対策の強化など改定の内容を報告。「雇用の当面の課題と経済界の取り組み」では、新卒者へのより多くの採用機会の提供を依頼するとともに、学業に配慮した採用選考活動のあり方を引き続き検討していくと述べた。「未来モデル都市プロジェクト」では、環境・エネルギー、医療・介護など今後の成長分野に・u條ヨして企業が持つ先端技術を都市に結集し、革新的な技術開発や実用化に向けた実証実験を展開するプロジェクトの検討状況を報告した。

一方、北経連からは、山崎幸雄常任理事が「人流・物流の結節点“北陸”の構築」、深山彬副会長が「活力あふれる地域づくりの推進」、犬島伸一郎副会長が「第三次中期アクションプランの策定」についてそれぞれ報告。

「人流・物流の結節点“北陸”の構築」では、北陸三県の一体的な発展に不可欠な北陸新幹線の敦賀延伸について経団連に理解を求めるとともに、舞鶴若狭自動車道、中部縦貫自動車道、能越自動車道の早期全線開通、東海北陸自動車道の早期全線4車線化等の必要性について説明。「活力あふれる地域づくりの推進」では、北陸の産業振興策として、地元企業が持つ先端技術や得意技術を大手企業につなぐマッチング事業を進めていることを報告。「第三次中期アクションプランの策定」では、都市圏と北陸地方の格差拡大、ものづくりにおける人材育成・技術継承などの課題を踏まえ、北陸地方の自立戦略をまとめた「第三次中期アクションプラン」を策定中であると報告した。

■ 意見交換

第2部の意見交換では、北経連から、(1)円高対策・デフレへの取り組み(2)広域交通ネットワーク・港湾の整備促進(3)観光産業の成長に向けた戦略(4)税・財政・社会保障の一体改革(5)人材の育成・技能継承(6)低炭素社会づくりに向けた取り組み――の6点について質問があった。

これに対して経団連は、(1)国内投資を喚起し、雇用を創造する、新成長戦略の着実な実施が重要(岩沙副会長)、(2)「総合特区制度」を活用した国家的見地から総合経営を行う「広域ポートオーソリティー」の創設やCIQ(関税・出入国管理・検疫)機能のシングルウィンドウ化が不可欠(川村隆副会長)、(3)日本の観光産業発展のためには、観光コンテンツの強化や戦略的な情報発信、インフラ整備等を通じた国内観光需要の喚起とともに訪日外国人観光客の増加が重要(佃副会長)、(4)社会保障費用の増加分は消費税率の引き上げで対応するとの原則のもと、低所得者への逆進性対策を講じつつ消費税を段階的に引き上げるとともに、法人税率を、安易に課税ベースを拡大することなく引き下げることが重要(渡辺捷昭副会長)、(5)大学・大学院は、ものづくり産業の技能継承を含め研究、教育、高度人材育成、地域貢献など、どの機能に特化するかを明確にすべき(榊原定征副会長)、(6)「日本経団連低炭素社会実行計画」を温暖化対策の中心に位置付け、環境と経済の両立を実現することが重要(坂根正弘副会長)――と発言した。

◇◇◇

懇談に先立ち日本経団連首脳は、経皮吸収タイプの医薬品開発を積極的に進め、日本、欧州、アフリカ、南米の人々の生活の質的向上に貢献しているリードケミカル(本社=富山市)を視察し、森政雄社長ら同社経営陣との意見交換を行った。

【総務本部】
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