日本経団連タイムス No.3020 (2010年11月11日)

COP16に向けた政府の対処方針など

−経産省・菅原産業技術環境局長と懇談/環境安全委員会


2013年以降のポスト京都議定書をめぐる国際交渉については、11月末から12月初旬にかけてメキシコ・カンクンにおいて、気候変動枠組条約第16回締約国会議(COP16)が開催される。日本経団連としては引き続き、米中を含むすべての主要排出国が参加する、公平かつ実効性のある単一の国際枠組の構築に向け、関係方面に働きかけていくことが重要である。

そこで、環境安全委員会(坂根正弘委員長、天坊昭彦共同委員長)は2日、東京・大手町の経団連会館で会合を開き、COP16に向けた日本政府の対処方針などについて、経済産業省の菅原郁郎産業技術環境局長から説明を聞き、意見交換を行った。あわせて、COP16に向けた提言「地球温暖化防止に向け真に実効ある国際枠組を求める」の審議を行った。菅原局長の説明概要は次のとおり。

■ 京都議定書は不平等条約

京都議定書において、世界最大の排出国である米中は削減義務を負わず、削減義務を負う国は世界全体の排出量の27%を占めるにすぎない。米中が入らない京都議定書を延長すれば、27%の国のみが義務を負うかたちが未来永劫存続しかねない。米中が入る枠組みを実現できなければ、地球温暖化防止の観点からも意味がない。

京都議定書における日本の「90年比6%削減」という約束はそもそもどのように決まったか。COP3(京都会議)開始前の1997年、日本は2.5%削減目標を掲げて交渉していたが、米国のゴア副大統領(当時)が「先進国一律7%削減」を提示したことを受け、交渉の最後の段階で、EUが8%削減に目標を引き下げた。これにより、日本は6%削減の約束を受け入れざるを得なくなった。

■ 日本の国富が流出

京都議定書では、自主行動計画を中心に目標を達成する見込みであるが、これは京都クレジットの購入を織り込んでいる。政府が約1億トン、民間が約3億トン、日本全体で約4億トンのクレジットを購入するため、1500億円もの税金が投じられている。民間では、6000億円程度の資金を投じてクレジットを買っている。

つまり、日本全体でおよそ8000億円もの資金が中国や東欧に流出しているのが現状である。

■ 国際交渉の状況

現在、すべての主要排出国が参加する単一の国際枠組に向けた交渉は停滞している。米国は、京都議定書には絶対に加盟しないと繰り返し明言しており、議定書の第二約束期間が設けられようと無関心である。

他方、中国を含む途上国は、自らの削減目標の国際約束は拒否しつつ、京都議定書の延長、さらに先進国の目標の深掘りも要求している。議長国のメキシコもCOP16での成果を求め、京都議定書の延長に傾きつつある。

欧州連合(EU)が「京都議定書の第二約束期間について検討する意思がある」との姿勢へと変化するなか、京都議定書批准国のうち、日本、ロシア、カナダの3カ国が延長に強く反対しているのが現状である。

今後、国際的な圧力が強まる可能性も高く、日本の立場を貫くには、国内の世論が政府の方針をしっかり支えることが重要である。

【環境本部】
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