日本経団連タイムス No.3021 (2010年11月18日)

提言「日中韓自由貿易協定の早期締結を求める」を公表

−物品、サービス貿易、投資など分野別の具体的論点提起


日本経団連は16日、提言「日中韓自由貿易協定の早期締結を求める」を公表し、物品、サービス貿易、投資、知的財産権、国際標準化等を含む包括的な協定の実現に向け、交渉を早期に開始するよう求めた。経団連は同提言を12月1日から3日に中国・威海で開催される日中韓FTAに関する産官学共同研究の場で日本の経済界の意見として発表する予定である。概要は次のとおり。

1.日中韓FTAの重要性

経団連では、2020年を目途に、アジア、大洋州、米州を包含する「アジア太平洋自由貿易圏」(FTAAP)を完成するよう求めている。FTAAPを実現するためには、特に、ASEAN+6のGDPの7割を占める日中韓の貿易投資を活性化させる観点から三国でFTAを締結し、空白を解消することが急がれる。現在、2012年を目途に報告書を取りまとめるべく、日中韓FTAに関する産官学共同研究が進められているが、その終了を待たず、交渉を開始するよう要望する。

2.主な論点

会員企業に対するアンケートに基づく、日中韓FTAに盛り込むべき事項は次のとおり。

  1. (1)関税の引き下げ、撤廃
    鉄鋼製品、自動車、電気・電子機器、石油化学製品等の分野の関税引き下げ、撤廃で域内全体の国際競争力強化、生産・輸出拠点としての魅力向上を図る。また、アルミ、コークス、レアメタル、レアアース等に対する輸出関税の引き下げ、撤廃等の実現を求める。

  2. (2)サービス貿易・投資
    金融、建設、不動産、流通等のサービス分野や主要製造業における外資制限、参入制限の撤廃・緩和が求められる。あわせて、撤退・減資規制、パフォーマンス要求(技術移転の義務付け、国産化比率の達成、納税水準の約束等)の撤廃、送金規制の撤廃を求める。

  3. (3)知的財産権
    模造品、商標権侵害の取締強化を求める。また、ITセキュリティー製品のソースコードの開示の義務化や環境技術に関する特許権の強制実施等に対する企業の懸念を踏まえ、日中韓FTAにおいて知的財産権保護の規定を設けるとともに、その着実な実施を図るよう求める。

  4. (4)環境問題
    環境問題に関し日中韓の協力を推進する必要がある。日中韓三国は省エネのための協力を推進する必要がある。すでに「クリーン開発と気候に関するアジア太平洋パートナーシップ」(APP)の下、省エネ技術の移転のための官民協力がセクター別に展開されており、日中韓FTAは、これに代表される官民の取り組みを推進する際の法的基盤となる必要がある。あわせて、現在三国間で異なる省エネ・環境技術の規格、基準の標準化に向け、日中韓FTAが寄与することに期待する。

3.TPPへの参加

日中韓FTAと並行して、日韓FTAの締結、「環太平洋経済連携協定」(TPP)への参加も重要である。わが国と同盟関係にあり、世界第一の経済大国である米国を含むTPPに参加し、先進的なルールづくりを進めることは、ハイレベルな日中韓FTAの実現にも寄与する。

【国際協力本部】
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