日本経団連タイムス No.3021 (2010年11月18日)

IT利活用向上のあり方を議論

−第72回シンポジウム開催/21世紀政策研究所


日本経団連の21世紀政策研究所(米倉弘昌会長、森田富治郎理事長)は10日、東京・大手町の経団連会館で第72回シンポジウム「日本の経済産業成長を実現するIT利活用向上のあり方」を開催した。同研究所では今年度プロジェクトとして、わが国のIT利活用に関する実態調査を行い、経済産業成長につながる経営環境の創出とIT利活用のあり方について検討してきた。今回のシンポジウムでは調査結果の報告と活発なパネルディスカッションが行われ、経団連の会員企業を中心に200名近い参加者が集まった。また、パネリストとして、高橋千秋・参議院議員/民主党政策調査会副会長、飯島淳一・東京工業大学大学院教授、細川泰秀・日本情報システム・ユーザー協会副会長、遠藤紘一・日本経団連情報通信委員会情報化部会長が登壇した。

まず、森田理事長が開会あいさつで、「生産性の低迷がわが国経済にとっての大きな足かせとなっている。生産性向上を図るためには持続的イノベーションが不可欠であるが、なかでもITの役割が重要となっている。わが国は世界有数の情報通信環境を活かしつつ、今後は企業の戦略的IT投資等の拡大に向けた具体的施策の実行が必要である」と調査のねらいを述べるとともに、今後の政策論議活性化の必要性を訴えた。

続いて、調査に当たった嶋田惠一・日立総合計画研究所研究第三部長が報告を行った。調査結果から「日本は安定的にIT投資を増加させているが、経済成長に結び付いておらず、欧米諸国に比べ戦略的IT投資の発想も弱い」とし、「CIO(最高情報担当責任者)およびIT部門の役割がシステム開発や運用に限定され、経営に貢献できていない」「CEOおよび事業部門がITの本質やメリットを理解するための教育や動機付けが必要」「IT投資対効果の評価が定量化の容易な指標に偏重し、中長期的な業績との関連付けが弱い」などの課題を指摘した。そのうえで、経済・社会システムの変革ニーズや新ビジネスに合致した規制改革、競争促進的で公正な取引環境の整備、事業部門とIT部門が共有できるIT投資対効果評価の導入、内部(自己)評価から外部(相互)評価への政策シフト、トップダウンによるハイリスク型R&D投資の促進などが重要であると述べた。

また、「戦略的IT利活用向上を目指して」と題したパネルディスカッションでは、「IT利活用の前提として、まずビジネスプロセスの革新へのアイデアが必要である」「CIOにはITに関するスキル・業務知識・経験も必要な素養として求められるが、これらを一人で持つことは困難なのでCIOのチームをつくることが有効ではないか」「CIOの育成のために外部のサポート組織を活用することも一案」「ITユーザー企業は自らの欲するものをもっと明確にITベンダー企業に伝え、ベンダー企業も経験からくる提案をユーザーに対しもっと上手に行うなど、両者のコミュニケーションを綿密に行うことが必要ではないか」「海外の優秀なIT人材を積極的に受け入れてグローバルな刺激を与えてはどうか」「日本のIT品質は過剰とも言われるが、もっと自信を持って日本の高品質を積極的に海外にアピールすべき」「各省庁間の横の連携を図り司令塔機能を有する政府CIOを設置すべき」「行政手続き・窓口のワンストップ化と電子行政の積極的な推進を図るべき」など、多岐にわたる議論が展開された。

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