日本経団連タイムス No.3022 (2010年11月25日)

連合との懇談会を開催

−経済成長に向けた課題や雇用と人材育成・活用などで意見交換


あいさつする米倉会長

日本経団連は17日、東京・大手町の経団連会館で日本労働組合総連合会(連合、古賀伸明会長)との懇談会を開催した。経団連からは米倉会長はじめ、渡文明評議員会議長、森田富治郎副会長、大橋洋治副会長、岩沙弘道副会長、清水正孝副会長、渡辺捷昭副会長、川村隆副会長、三浦惺副会長ら、連合からは古賀会長はじめ、会長代行や副会長、事務局長ら約40名が参加。(1)わが国経済の成長に向けた課題(2)日本の成長を支える雇用と人材育成・活用――をテーマに意見を交換した。

冒頭、米倉会長は、「労使トップが率直な議論を行って意思疎通を図ることは、適切な企業経営を行ううえで重要」と同懇談会の意義を強調した。そのうえで、今回の懇談テーマである経済成長や雇用、人材育成など、「国の根幹に関わる重要なテーマについて率直な意見交換をお願いしたい」とあいさつした。

一方、古賀会長は、「働く現場、雇用の現場が安定していれば、社会は安定し、発展していく」と述べるとともに、このことは労使で共通の価値観として共有できるとの認識を示し、前向きな意見交換をしていきたいと語った。

■ わが国経済の成長に向けた課題

第1テーマ「わが国経済の成長に向けた課題」について、経団連側は、政府の新成長戦略の完遂に向けて、進捗のチェックと必要な補強・改善を労使共同で政府に働きかけ続ける必要があると述べたほか、政府が進める温暖化防止のための政策について、企業の国際競争力や投資・雇用に大変な悪影響があるとの懸念を表明した。また、TPP(環太平洋経済連携協定)への参加、EPA、FTA網の拡充により、貿易・投資環境を整備することの重要性や、実質的な法人税負担の軽減など、税制抜本改革の早期断行の必要性などにも言及した。

一方、連合側は、日本経済の安定的成長には経済政策と雇用政策の一体的推進が最も重要であると指摘。地球温暖化問題への対応については、「公正かつ実効性ある単一の国際的枠組みと国内政策を早期に構築すべき」との考えを示した。また、法人税減税についても触れ、「何のために行うのか目的を共有することが重要であり、減税分は国内投資や雇用に振り向けるべき」との発言があった。

■ 日本の成長を支える雇用と人材育成・活用

第2テーマ「日本の成長を支える雇用と人材育成・活用」については、経団連側は、「早期に景気を自律的な回復軌道に乗せるためには、雇用の維持・安定に向けた取り組みの継続が重要」との認識を示すとともに、新たに雇用を生み出していく取り組みを加速することが不可欠であることを強調した。また、人材育成については、「ものづくり立国をわが国の経済成長の生命線とする以上は、イノベーションの創出、技術力、研究開発力の維持向上が重要であり、その観点から人材育成の取り組みの重要性が増している」との意見が出された。このほか、労働者のライフスタイルや働き方のニーズの多様性、グローバルな働き方などに対応するうえで、多様な就業形態、雇用形態の活用が重要であることや、現在議論されている有期労働法制に関し、実情に合わせて考える必要があり、一律的な規制やルール化はかえって雇用に悪影響を及ぼす可能性があることなどにも言及した。

一方、連合側は、成長の推進力となる人材の育成・活用には、質の高い雇用への転換の推進がまず求められるとしたうえで、グローバルな事業展開を支える人材や高い技能と技術を活かして生産を支える人材を育成することが重要と指摘した。また、将来の日本の成長にとって、新卒者・若年者雇用が重要であるとし、各企業における雇用の拡大と人材育成への努力を求めた。このほか、ものづくりの現場における高度熟練技能など、数字に表れないものの評価が重要との意見や、ものづくりを支えている第一線の従業員の雇用と労働条件の安定が大切であるとの意見があった。

閉会あいさつで古賀会長は、雇用問題が世界的に注目されており、労使が社会的パートナーシップとして意見交換を行うことが重要としたうえで、「今後も課題認識を共有し合いながら、お互いにやっていけるものは共同してやらせていただきたい」と呼びかけた。

続いて、米倉会長は、「新成長戦略を着実かつ早期に実現することの重要性について、労使の共通認識を確認できたことを心強く感じた」と所感を述べるとともに、日本が抱える課題について、労使で協力して取り組んでいきたいと語った。そのうえで、「良好な労使関係の維持とさらなる発展に向けて引き続き尽力賜わりたい」と締めくくった。

【労働政策本部】
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