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EUの新通商戦略で説明するペトリチオーネ局長(左) Photo : N . Kawaguchi © EU, 2010 |
日本経団連ヨーロッパ地域委員会企画部会(谷垣勝秀部会長)は、11月24日、東京・大手町の経団連会館で、欧州委員会貿易総局のマウロ・ペトリチオーネ局長から、11月9日に欧州委員会が公表したEUの新通商戦略について説明を聞くとともに懇談した。ペトリチオーネ局長の説明要旨は次のとおり。
新通商戦略においても、WTOドーハ・ラウンド交渉の妥結が最優先課題であることに変わりはない。G20ソウル・サミットでは2011年が「機会の窓」であるとしており、実際にそうなるよう全力を尽くす。新戦略では、ポスト・ドーハのWTOのあり方等を議論するため賢人会議を設置することとしている。
ドーハ・ラウンドを補完するものとして二国間の自由貿易協定(FTA)交渉も並行して進める。カナダとは、自由化されていない分野は少ない一方、解決困難な問題が残されていたことから、交渉開始は難航した。しかしながら、協定を通じた投資・サービスを中心とした経済への移行が長期的にみてカナダの利益になるとの調査結果が出て、カナダが各州の政府調達市場の開放について政治的にコミットしたことから交渉開始にこぎつけた。先進国同士の協定は、関税撤廃のような短期的利益ではなく、長期的利益を考えて進める必要がある。
米国、中国、ロシア、日本、インド、ブラジルという戦略的パートナーとの経済関係強化も重点課題である。日本との関係については、首脳協議の合意に基づく合同ハイレベル・グループが中心になって取り組んでいる。一方にとって短期的に魅力的な案件であっても他方にとっては取り扱いが難しいという問題がある。そのような分野では、日本と経済統合協定を締結した場合、短期的に勝ち負けがはっきりしてWin‐Winの関係を築くことができない。例えば、欧州自動車産業も長期的には事業の再構築等を通じて競争力を持つことは可能と考えるが、そのような過程に進むためには、他の欧州産業からの協定締結への強い支持が必要である。また、日・EU間には長期的に双方の経済成長につながり得る案件があるが、そのために双方が規制にかかる主権を分かち合うことができるか否かという問題もある。
欧州企業のグローバル市場へのアクセスを円滑にするには、基準の調和・収斂や規制協力を通じ、パートナーの利害関心をも取り込んで国際基準を策定する必要がある。
政府調達に関しては、EU市場の3%を外国企業が占めているのに対し、米国や日本におけるその割合は0.5%にすぎず、相互主義の観点からWTO政府調達協定を上回る対応を求めたい。不均衡がある場合に是正措置を求め、機能しなかった場合は当該国企業に対して政府調達市場を閉鎖することを可能とする法案を来年提出する予定である。
リスボン条約により投資政策に関してEUに排他的な権限が付与された。加盟国による既存の投資協定を引き続き有効とする措置を講ずることが優先課題である。今後はFTAのなかで投資に関しても規定することが望ましいが、状況によっては投資協定を結ぶこともあり得る。