日本経団連タイムス No.3024 (2010年12月14日)

「未来都市が切りひらく課題解決型モデル」

−小宮山・三菱総合研究所理事長が講演/都市・地域政策委員会


日本経団連は11月30日、東京・大手町の経団連会館で都市・地域政策委員会(岩沙弘道委員長)を開催し、小宮山宏・三菱総合研究所理事長から、「未来都市が切りひらく課題解決型モデル」というテーマで講演を聞き、意見交換を行った。
小宮山理事長の説明の概要は次のとおり。

■ 今後のわが国の成長のカギ

わが国の持続可能な発展を考えるうえで一つのキーワードとなるのが「人工物の飽和」である。わが国の人口増加が頭打ちとなるなか、自動車や家電、住宅などの人工物も飽和を迎える。
こうした家、車などいま現にある商品の「普及型需要」については、経済成長によって飽和する。一方、「創造型需要」は内需を生み、雇用を創出する。これは、高効率給湯器やLED照明、太陽電池などわが国が優位にあるグリーン成長産業や、高齢化社会に不可欠な製品を扱うシルバー成長産業により創出される需要である。
わが国がすでに強みを持つグリーンイノベーションについては、今後、世界市場で着実に勝利し、シルバーイノベーションについては、取り組みを強化し、新たな産業として確立しなければならない。
もはや、イノベーションの必要性やあり方の議論はし尽くした。後は実行するのみである。

■ 環境と経済の両立による成長

私が掲げる「ビジョン2050」では、2050年までに、エネルギー効率3倍、再生可能エネルギー2倍、物質循環システムの構築という3つの目標を掲げている。
わが国が取り組むべき戦略は、家庭・オフィス、輸送といった日々の暮らしでCO2排出を削減するとともに、ものづくりの高効率性で世界をリードすることである。日本ほど環境と経済を両立させた国はない。

■ 高齢化社会への対応

世界が急速に高齢化するなか、わが国もシルバーイノベーションに力を入れる必要がある。高齢者になっても人が仕事や運動などさまざまな活動を通じて、日々成長できる社会をつくらなければならない。

■ 国家モデル転換の必要性

わが国は、『坂の上の雲』の時代は国が主導して産業を育成すれば、GDPが増え、人々の暮らしがよくなった。しかし、今やわが国は雲のなかにある。市民主導で自分たちの暮らしをもっとよくしようと取り組めば、新産業が興り、GDPが増え国も強くなる。日本は課題先進国なので日本の課題を解決すれば世界のモデルにもなる。

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小宮山理事長の説明に続き、「サンライズ・レポート」の未来都市モデルプロジェクトに関する記述について審議を行い、委員会として了承した。

【産業政策本部】
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