経団連タイムス No.3068 (2012年1月1日)

連合との懇談会を開催

−経済成長への取り組みで意見交換


あいさつする古賀連合会長

経団連は12月14日、東京・大手町の経団連会館で日本労働組合総連合会(連合、古賀伸明会長)との懇談会を開催した。経団連からは米倉弘昌会長をはじめ、評議員会議長、副会長ら、連合からは古賀会長、会長代行、副会長ら全体で約40名が参加。「わが国経済の成長に向けた取り組み」をテーマに意見交換した。

冒頭のあいさつで米倉会長は、長引くデフレや行き過ぎた円高などの従前の問題に加え、東日本大震災からの早期復興という極めて大きな課題に直面しており、この厳しい現状を乗り越えるためには、国内の事業環境の改善と民間主導の力強い持続的な経済成長の実現が必要との考えを強調した。さらに、東日本大震災発生後から労使がみせた迅速な対応や強力な現場力に言及したうえで、「今後も労使が一致協力していくことによって、わが国経済の復活と再生への道も必ず拓けるものと信じている」と語った。

これに対して古賀会長は、日本の置かれている状況認識は一致しているとの見解を示したうえで、成長の原動力である“人”にあらためて視点を当てる必要があるとして、中長期的な人への投資の重要性を訴えた。また、あいさつの最後に、「労使で意見の違うことはあるが、同じ方向のものは労使で提言するような道筋を模索していきたい」と呼びかけた。

■ 意見交換

両会長のあいさつの後、「わが国経済の成長に向けた取り組み」をテーマに、多岐にわたって意見交換を行った。経団連からは、(1)TPP(環太平洋経済連携協定)をはじめとする経済連携の推進には国民的な合意形成が必要であり、労使が果たす役割が大きい(2)成長著しいアジア重視の戦略を取ることで日本を成長軌道に戻すことができる(3)行き過ぎた円高の継続によって生産拠点の海外シフトが一層進み、産業の空洞化と雇用への悪影響を懸念する(4)円高の是正あるいは税・社会保障の一体改革など労使で協調できることは協調すべき(5)経済成長を目指すにあたり、電力の供給カットや制限があってはならない――などの意見が出された。このほか、経済面でも雇用面でも影響の大きい観光の重要性を説く意見や、労働政策に関する議論は企業の実情を踏まえて慎重に行うべきことを強く求める発言などがあった。

一方、連合からは、(1)円高対策や新成長戦略をどう具体化するかが重要である(2)生産拠点の海外シフトに関連して、内外の役割を明確化していく必要がある(3)海外での労使紛争が急増していることを踏まえ、現地に派遣される日本人社員に基礎的な知識や情報を身に付けさせ、未然に労使紛争を防ぐことが重要である(4)審議会における公労使の三者構成の意義をあらためて世に知らしめるとともに、労働政策においては、政労使が十分に話し合い方向性を見いだすことで、予見可能性が高く持続可能な制度になる(5)働き続けたい女性が出産や介護などで離職せずにすむよう、育児・介護と仕事の両立支援をさらに行ってほしい(6)非正規労働者が正規労働者に転換できるよう職業訓練等を社会制度に取り入れるべき――など、さまざまな意見が出された。

閉会にあたって古賀会長は、現在の大きな環境変化のなか、労使双方の考えや価値観を統合した新しい視点からのコンセプトをどうつくるかが求められているとしたうえで、「いくつかの課題で議論を深められれば、共同でできることがあるのではないか」と述べ、労使で引き続き議論を行うことの重要性を強調した。

一方、米倉会長は、「労使がパートナーシップを組んで、いかに経営を健全化し競争力を強化していくのかを協議することが非常に重要になってくる」との考えを示しながら、労働側の代表である連合と、経営者側の代表である経団連が協議を深めていくことは非常に有益であると述べた。

【労働政策本部】
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