経団連タイムス No.3069 (2012年1月12日)

第65回評議員会を開催


経団連は12月22日、東京・大手町の経団連会館で第65回評議員会を開催した。米倉弘昌会長、渡文明評議員会議長をはじめ、副会長、評議員会副議長、評議員ら約280名が参加した。

野田首相
玄葉外相
古川国家戦略相
枝野経産相
小宮山厚労相

冒頭あいさつした来賓の野田佳彦総理大臣は、野田内閣の課題として、震災からの復旧・復興、原発事故の収束、日本経済の立て直しを挙げた。また、高いレベルの経済連携の一環として、TPPについて国益をしっかりと踏まえた対応をすることや、社会保障・税の一体改革について、逃げずに、ぶれずに、先送りせずに、しっかりと結論を出していきたいと決意を語った。

続いて、渡議長があいさつに立ち、東日本大震災からの復興とともに、企業の事業環境を改善することが重要であると訴えた。また、エネルギー・環境問題について、(1)安全性の確保と住民の理解を前提とした原子力の活用(2)安定供給と経済性に重点を置いた中長期のエネルギー政策の策定(3)エネルギー政策と整合性のある温暖化対策――が必要であると述べた。

また、米倉会長は、東日本大震災の発生直後から、経団連としても、企業の協力を得て復興支援に取り組んできたことを紹介。国会で第3次補正予算と財源確保法が成立したことに触れつつ、本格的な復興への取り組みの加速を政府に要請した。また、野田政権がこれまでに打ち出した基本政策は経団連の考え方と方向性を同じくするものであり、後は具体的な施策をスピーディーに実行することが重要だと指摘した。

さらに、日本経済の真の復活には、経済界が自ら知恵を絞り、行動を起こすことが重要であるとし、震災後に取りまとめた「成長戦略2011」では、企業の立地競争力の強化を大きな柱に据えたと語った。また、高齢化と財政難を抱えるわが国にとって、社会保障と税、財政の一体改革は待ったなしの状況であり、消費税の議論が本格化するなか、野田総理に強いリーダーシップを発揮してほしいと期待を示した。

閣僚のあいさつでは、まず、玄葉光一郎外務大臣が「実のある外交」を展開したいとして、アジア・太平洋地域でネットワーク外交を進めることや、わが国の内向き傾向の脱却を目指し、ODA予算を反転させるとともに、経済連携などにも取り組みたいと述べた。

国家戦略担当、内閣府特命担当大臣(経済財政政策、科学技術政策)、社会保障・税一体改革担当、宇宙開発担当の古川元久大臣は、国家戦略会議で取りまとめた「日本再生の基本戦略」に基づき、復興はもとより日本経済・社会の再生に取り組むとし、また、財政健全化、社会保障・税の一体改革案の取りまとめに向けた決意を表明した。

枝野幸男経済産業大臣は、クールジャパンの積極展開や少子高齢化社会における潜在需要の掘り起こしなど、攻めの経済運営が重要との見解を示した。また、エネルギー政策では、新しいエネルギー基本計画と革新的エネルギー・環境戦略の策定に向けた議論をしているなかで、今後は、我慢ではない省エネと再生可能エネルギーの導入が柱となるとの見解を示した。

小宮山洋子厚生労働大臣は、東日本大震災からの復旧・復興の柱が「仕事」であるとの認識から、被災地の産業と一体となった雇用創出や、高齢者・女性・障害者等を対象としたモデル事業に取り組んでおり、また、社会保障の持続可能性を担保するため、消費税引き上げに向けた理解を広げていくと述べた。

■ 白川総裁講演

白川日銀総裁

続いて、日本銀行の白川方明総裁が、「グローバリゼーションと人口高齢化−日本の課題」と題して講演した。白川総裁は、中長期的なスパンで日本経済をとらえ、日本が直面する課題やそのもとでの中央銀行の課題について述べた。その主なポイントは、次の5点である。

  1. (1)日本経済はグローバリゼーションの進展と急速な人口高齢化という大きな変化に直面。その影響は非常に大きいと認識する必要がある。
  2. (2)次世代の生活水準を守るには、変化への対応力を高め、日本の成長力を強化する必要がある。
  3. (3)デフレは成長力の強化を通じて克服されるものである。
  4. (4)成長力強化のためには、企業のチャレンジ精神が重要であり、それを引き出すための環境整備が必要。また、グローバリゼーションの最大限の活用、内需掘り起こしへの挑戦、労働・資本の高成長ビジネスへの円滑な移動が重要である。
  5. (5)日本銀行も、物価安定のもとでの持続的成長に向けて、金融面からの貢献を粘り強く続けていく。極めて緩和的な日本の金融環境を、成長力強化に活かしてほしい。
【総務本部】
Copyright © Keidanren